エキゾチックだけど、知的でモダンな2枚
今回はエキゾチックなサンプリングが特徴的な2枚を紹介します。まず新譜は、東京を拠点に活動する林良憲が、ベルリンのレーベルDisco HalalからリリースするEP『不加算集合体』。日本の民謡を思わせる声のサンプリングと、アシッドジャズやハウスの雰囲気を醸し出すビートが耳に残ります。その組み合わせ方がすごくよくて、聴いているとまるで酩酊しているかのような不思議な気持ちになります。おしゃれな都会のバーでウィスキーを飲んでいるというよりは、いい意味で田舎の大衆居酒屋で熱燗を飲んでいるような。彼は使い込まれた感じのざらざらした音質が好きだと思うんですけど、そんな日本の古家具のような味わいもありつつ、現代的な新しさも感じさせる上品な仕上がりになっています。ヨーロッパツアーをしたりEPをコンスタントに出したりと精力的で、これからの活動も楽しみです。
あわせて聴きたい旧譜は、ロンドンのレーベルBushesからリリースされたLLの2016年作『OMBU』です。Bushesは林さんもリリースしたことのあるGoing Goodと関わりが深いレーベル。『OMBU』は打楽器から中東を感じさせるエキゾチックさで、四つ打ち的なビートをベースに、一風変わったサンプリングが乗っています。一聴すると不協和音っぽく形をなしていないように聴こえますが、リズムが保たれているから、実はちゃんとひとつの曲にまとまっている。1曲目のDisco Mixはストレンジなサンプリングがうまくはまっていて、2曲目のBreak Mixはハウス寄りです。いずれにしても林さんの作品よりコラージュの要素が強めかな。2枚とも不穏な空気が漂いつつ、知的でクールな印象を与えてくれます。
Profile
リカックス
DJ／ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」主宰者。J-WAVE「SONAR MUSIC」 ではラジオパーソナリティー として活動中。
SOURCE：SPUR 2018年3月号「LICAXXXのコレキキナ」
interview & text:Annie Fuku photography:Yuhki Yamamoto
PICK UP
『Starcrawler』
Starcrawler
￥2,000／Beat Records
自由奔放なロックのスピリットを体現する18歳のシンガー、アロウ・デ・ワイルド率いるLA出身のバンドがデビュー。パンクやヘヴィメタルやグランジのカッコいい部分をミックスし、デンジャラスな匂いをふりまくこのファーストは、大音量で聴くのが正解！
『Vessel of Love』
Hollie Cook
￥2,000／Big Nothing
レゲエのグルーヴにドリーミーな美声を乗せて、地元ウエスト・ロンドンのコスモポリタンな空気を届けるのは、セックス・ピストルズの一員を父に持つホリー。彼女の都会型トロピカル・ポップにはほどよいテンションとメランコリーが漂い、真冬にもお似合いだ。
text:Hiroko Shintani
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着たい服はどこにある？
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