「ロエベ財団 クラフトプライズ 2023」の受賞者が決定! 大賞は稲崎栄利子「Metanoia」に

ロエベ財団が2016年より現代のクラフトマンシップの比類のなさと芸術的貢献、先進性を讃えるために毎年発表してきた「ロエベ財団 クラフトプライズ」。先頃ニューヨークで行われた選考により、2023年の大賞が香川県高松市を拠点とする陶芸家、稲崎栄利子による「Metanoia」に決定した。

「ロエベ財団 クラフトプライズ 2023」の受賞者が、先頃ニューヨークで行われた選考の結果決まった。大賞に選ばれたのは、香川県高松市を拠点とする陶芸家、稲崎栄利子の「Metanoia」だ。

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大賞に選ばれた稲崎栄利子の「Metanoia」。

「ロエベ財団 クラフトプライズ」は現代に生きる職人たちの比類のなさと芸術的貢献、先進性を世に示し讃えるべく、クリエイティブ ディレクター、ジョナサン・アンダーソンの発案でスタート。今日の文化におけるクラフトの重要性を認め、アーティストの才能、ビジョン、革新への意欲を未来に欠かせないものとして再認識し、定着させることを目指している。

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「ロエベ財団 クラフトプライズ」の発案者、ジョナサン・アンダーソン(上段右から2番目)をはじめとした審査員たち。

アナチュ・サバルベアスコア、オリヴィエ・ガベー、パトリシア・ウルキオラをはじめとしたデザイナー、建築家、ジャーナリスト、批評家、キュレーターなどが審査員団を構成した今年度は、ものの本質から熟考し時間をかけたテクニックと、素材を巧みに操る術を探求した作品が各賞を受賞。なかでも稲崎の、極小のパーツを集積することで結晶化した表面を持つ複雑な陶磁器作品は、「陶磁器でさまざまなエレメントから相乗効果を生み出すという、これまで見たこともないような卓越した技術である」と審査員から絶賛された。

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特別賞に選ばれた渡部萌の「Transfer Surface」。

また、特別賞の一つめに選ばれたのは、東北地方に出向いて素材を集め、自然や植物をモチーフにした作品を制作する渡部萌の「Transfer Surface」。渡部による胡桃の木の皮でできた箱は、季節の循環に敬意を表した、日本の生け花の器を思わせるもの。樹皮の素材感の素晴らしさと、建築の構造や修理の伝統に着想を得たリベットの使用が評価された。  

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特別賞を受賞したドミニク・ジンクペ「The Watchers」。

もう一つの特別賞は、ベナンのコトヌーを拠点にインスタレーション、ドローイング、絵画、彫刻、ビデオなど、多岐にわたる分野で活動するアーティスト、ドミニク・ジンクペの「The Watchers」に。この作品はヨルバの伝統的な信仰である多産を連想させる小さなイベジ(ヨルバ語で双子の意味)人形を組み合わせたもの。伝統的な信仰を彫刻的に再解釈し、現代のクラフトのあり方を拡張している点が評価され、受賞に至った。

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ファイナリスト30名の作品は現在、ノグチ美術館にあるイサム・ノグチのスタジオに展示中。©nkubota

なお、ファイナリスト30名の作品は2023年6月18日(日)まで、ニューヨークのノグチ美術館にあるイサム・ノグチのスタジオに展示されているが、「ロエベ財団 クラフトプライズ」にノミネートされたアーティストの作品を紹介するデジタルプラットフォーム「The Room」でも閲覧可能。現代のクラフト作家たちの圧倒的な技術や芸術性、ぜひじっくり見てほしい。


ロエベ財団
https://craftprize.loewe.com/ja/craftprize2023

   

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