ファッション・アイコンとしてのマイケル・ジャクソン
——まずはファッションについて聞かせてください。本作で見られるステージやビデオでのマイケルの衣装もアイコニックですが、普段着も印象的です。ボタンダウン・シャツやレタード・ジャケットといったプレッピーなアイテムが、彼が着ると繊細な感じになっていたのが伝わってきます。あなた自身はマイケルのスタイルにどうアプローチしましたか?
ジャファー「マイケルが着ていたものはずっと大好きだったんだ。特にステージ衣装。細かいところまで考えられていて、あと踊る時にその服がどう見えるか、彼はすごく気を遣ってたんだよ。ジャケットの重みをどのくらいにするか、どんなローファーを履くか。それを頭に入れて、僕も同じように時々リハーサルで衣装を着るようにした。実際の衣装を着て練習できるよう、コスチューム・デザイナーの人に頼んだんだ。重みやフィーリングが感じられるように。実際のパフォーマンスになって予想外のことが起きないようにね。衣装を着て振り付けられた動きをすると、素材のストレッチ性が足りないとか、パフォーマンスに影響することがあるから。例えば『ビリー・ジーン』のリハーサルをしている時に、パンツが破けちゃうことが何度かあって(笑)。キックすると、素材が伸びなかったんだよ。だから別の素材を探したりして、僕がもっと自由に踊れるようにしなきゃいけなかったんだ」
——マイケルの私服については? あなた自身のスタイルとは違いますよね?
ジャファー「でも、すごく楽しかったよ。撮影前からローファーはよく履いていて、自然に役に近づきたいと思っていたんだ。それからフランネルのシャツもよく着ていた。マイケルみたいにパンツインして、ヴィンテージ風のベルトを合わせてね。彼はリーバイスのヴィンテージデニムが大好きだったから、撮影が近づくにつれて、自然とそういう服を選ぶことが増えていった。そうやって身につけていくうちに、そのスタイルがだんだんしっくりくるようになっていったんだ。撮影前はリーバイスのジーンズをあまり手にしなかったけれど、いまではすっかり気に入っていて、家にいる時でも穿くようになったよ」
マイケル・ジャクソンを演じるということ
——マイケルを演じるのはどんな俳優でも尻込みするのではないかと思います。実際はどうでしたか。マイケルを超えようという心構えだったのか、彼になりきろうとしたのか。
ジャファー「僕としては超えようとしたことはない。絶対無理だから(笑)。とにかくできるだけ近づくというか、見る人がどこかの瞬間でマイケルを見ているような感覚を与えようとした。彼が実際スクリーンに映っているように感じてもらえるように。それが僕の夢だったんだ。だからこそ毎日練習したかったし、できるだけたくさん記録映像を見て、毎日何時間も音楽を聴いて、役に入ることをそんなに考えずにすむところまで辿り着こうとした。僕が無意識に何かやったら、『マイケルっぽいな』と思われるようにしたくて。長い時間をかけて準備をして、マイケルのあらゆる特徴にフォーカスしたんだ。とにかく彼の人間性、本質をとらえたかったから」
ジュリアーノ「(ジャファーに拍手して)僕が目指したのもジャファーとかなり似てる。見る人が子どもの頃のマイケルを見てるように思ってほしかったし、実際そこにいるように感じてほしかった。でも僕も、マイケル・ジャクソンを超えられると思ったことはないな。そんなの無理だよ!(笑)。マイケルは史上最高だから。でも大勢の人がかなりよくやった、って言ってくれてるみたいで、自分でも誇りに思ってる」
——ジャファーはマイケルを演じている時とは全然声も違いますよね。そのためにトレーニングをしたんですか?
ジャファー「はい。僕は普段マイケルより声が低い。最初は自分がしゃべってるオーディオ・テープを聞きながら、いろいろ試してみたんだ。自分でも『これほんとひどいな、もっとがんばらなきゃ』って、笑っちゃうこともあったんだけど。でも何か月も続けて、練習して。時間をかければ結果が表れると思ったから。で……撮影が始まる1年くらい前かな。だんだん自分が見つけた声に自信が持てるようになった。それに、映画ではマイケルのいろんな時代を演じるから、それにともなって声も変わる。一つのトーンだけじゃなく、いくつかのトーンを身につけなきゃいけなかった。後半では声が低くなっていくんだ。まだ若い頃はピッチが高いし、あとは彼が話す時のエネルギーもちょっと違う。そういった声の細かい抑揚や変化、ディテールに注意を払ったんだよ」
マイケルを知る人たちからの評価
——ジャファーはあなたのお父さんやリッチ&トーン(マイケルのツアーに参加したリッチとトーンのタラウエガ兄弟。本作で振付を担当)からマイケルのエピソードを聞いて、演技に反映したこともあると思います。そのなかで「こんなことがあったんだ!」といったエピソードがあったら教えてください。
ジャファー「リッチ&トーンが素晴らしいのはまず、とても才能があること。同時に、彼ら自身がマイケルとリハーサルをして、ツアーをしたことなんだよね。だからいろんな話をしてくれたし、それでマイケルがリハーサルにおいてどんなふうだったかをつかむことができた。いろんな話を聞いて、リハーサルにおけるマイケルの心構えを知ることができたんだ。あともちろん、父からもニュアンスや細かいことを教えてもらった。マイケルがライヴをやる時の視点や、ステージに出る直前の感じ。ネットや本、ビデオでは見つからないこと、実際そこにいた人からしか得られない情報を父やおじたち、マイケルといろんな瞬間を共有した人たちから聞くのはすごく役に立ったよ」
ジュリアーノ「僕が覚えてるのは、ジャッキーとマーロン(ジャクソン5のメンバーで、マイケルの兄たち)と話してた時に、『君はすごくよくやってる』って言われたんだ。『弟を体現してる』って。あれは本当に特別だった。マイケル・ジャクソンの兄弟から認めてもらえたんだから! マイケルからOKが出ないとしたら、次にすごいのはマイケルの兄弟からOKが出ることでしょ(笑)」
ジャファー「いいね(笑)」
ジャクソン一家のパーソナルな側面
——ジャファーにとってこの役を演じることは、あなたの家族の歴史や人間関係を深く知るプロセスでもあったと思います。それほどパーソナルだったのはある意味大変でしたか? それとも演じるのに役立ちましたか?
ジャファー「両方あったと思う。僕としては家族の一員であっても、マイケルのことは何も知らない気持ちで飛び込んでいきたかったんだ。一からあらゆることを知りたかった。だからジャクソン5からジャクソンズを経て、マイケルがブレイクしてソロ・キャリアに踏み出していくまで、すべてのアルバムを聴き込んだし、彼の自伝を読んで、あらゆる本を読んで、ツアー・ドキュメンタリーを見て、あらゆるパフォーマンス映像を見た。本当に深いところまで飛び込んで、できるかぎり彼のアートについて学んだんだ。同時に慈善活動においてマイケルがやったことについても。彼がそれに真剣に取り組んで、キャリアのモチベーションにしていたことを理解したのは、僕にとって一番の驚きだった。そこが助けになったな。それに家族のつながりがあったことで、自分の直感を信じられたと思う。何か疑念が湧いたような時、自信が持てなかったような時に、自分に向かって『同じ血を引いてるんだぞ』って言い聞かせられたというか。自分を信じて、努力すれば、それがスクリーンに表れると思えたからね」
マイケルの内面が垣間見える親密な場面
——ジュリアーノは仕事をしていない時は何をしていますか? この映画ではマイケルにほぼ子ども時代がなかったことも描かれますが、あなた自身もいま働いていますよね。普段は何をするのが好き?
ジュリアーノ「時間がある時はゲームするのが好き。あとはバスケットボール。それと、鶏と遊ぶのが好き」
——鶏?
ジュリアーノ「うん、ペットの鶏を2羽飼ってるんだ。フリーの時間はたくさんあるよ。子どもの頃のマイケルほど忙しくない。大人みたいに仕事をしながら、僕は普通の子どもとして過ごせてるから」
——それぞれ自分が出ているシーンで、お気に入りのシーンを教えてもらえますか。
ジャファー「僕が好きなシーンは、(チンパンジーの)バブルスにネバーランド(『ピーターパン』に登場する架空の島)の絵本を見せてるところ」
ジュリアーノ「あれはクールだよね」
ジャファー「あそこはマイケルのいろんな面を見せてるけど、彼は動物を友だちだと思ってるんだ。ペットじゃなくて、本当に共感してる。動物は彼から、愛情以外の何も欲しがらないから。だからこそ動物にすごく親しみを感じたんだと思う。あとマイケルは兄弟と一緒にツイスターで遊ぼうとして拒まれるんだよね。ああいうところにマイケルの繊細さ、傷つきやすさ、それにイノセンスが表れている。彼の精神性をのぞくことができるというか、マイケルが世界をどう見ていたかがわかるんだ。彼は不安に思った時や苛立った時に、ネバーランドに逃避してたんだよ。自分が生きている騒がしい世界から逃げ出したいと思った時に。だからあのシーンがすごく好きなんだ。胸打たれるから」
ジュリアーノ「僕が好きなシーンはカウンティ・フェアのシーン(ジャクソン5が屋外イベントでライブ演奏する場面)。僕が車椅子の女の子に向かって歌うシーンだね。あれは僕にとって特別だった。彼女に向かって『アイル・ビー・ゼア』を歌うんだけど、まるで『君を守るよ』って伝えてるみたいで」
ジャファー「あの瞬間は僕もすごく好きだな」
ジュリアーノ「すごくスペシャルだった。映画の中でも好きなシーンなんだ」
あのダンス、動きを再現するまで
——マイケルのダンス、動きを再現するのは並大抵ではなかったと思いますが、今回一番難しいと思ったところはどこでしたか? どの曲のどの振り付けが一番難しかったのか。
ジャファー「一番難しかったのはスピンかな。ずっと言ってるんだけど、マイケルみたいにスピンするのは本当に大変。あれほどのスピードで、コントロールしなきゃいけなくて。彼はタイミングよくいつでも止まれるんだよ。スピンして回っていたのが、この方向、あの方向というふうに、向かったところにピタッと止まれる。まさに自分の体をコントロールして。だから僕にとってはスピンと、それからもちろん、ムーンウォークだね。ジュリアーノは?」
ジュリアーノ「僕が一番大変だったのはジャッキー・ウィルソン(アメリカのR&B、ソウルのシンガー)みたいな動きと、あとは開脚スプリット! 僕、体が柔らかくないから。でもジェームズ・ブラウン(アメリカのソウル・シンガー。ステージで独特の動きを見せた)みたいな動きをたくさんしなきゃいけなくて。撮影中にケガしたくなかったから、毎朝リハーサル前にストレッチしてたんだ」
——あなたのダンス場面はCGじゃないんですね。
ジュリアーノ「CGじゃないよ!」
——ムーンウォークをマスターするのにはどのくらいかかりましたか。
ジャファー「僕も子どもの頃にやってたんだけど、映画のためにきちんと学ぼうとして……結局は3年半くらい練習したかな」
ジュリアーノ「子どもの頃にはムーンウォークできてた?」
ジャファー「うまくはなかったけど(笑)。当時自分ではうまいと思ってたけど、まあまあって感じかな」
——ジュリアーノは?
ジュリアーノ「僕はムーンウォークできます」
ジャファー「簡単にやっちゃうよね(笑)」
ジュリアーノ「そんなことない。練習してないとサビついちゃうからね」