リオ五輪にかこつけて

このアルバムの第一曲目の第一声、「Meu~」から、もうスコーンと抜けて気持ちがいいです。ジャケットがまた素敵でしょう?(鳩が苦手な人はともかく)。そういえば、これぞジャケ買いでした、「ELIS REGINA IN LONDON」(1969年リリース)。学生時代にHMVだったかdisk unionをプラプラしていて、このジャケットにズギュンと来たのです。全然試聴せずに買ったのですが、この飛翔感たっぷりのイメージ通りの音です。

ブラジルで一番人気あると言われた歌姫、エリス・レジーナのアルバムです。彼女が24歳のとき、フランス経由でロンドンに立ち寄った際、初めて共演するオーケストラと2日で一気に録ったもの。「Corrida de Jangada(帆かけ船のレース)」というファーストトラックは、タイトル通り疾走感たっぷりの「キモティー!!」仕上がりなのです。オーケストラと無邪気に追いかけっこをしているかのように、自由自在に歌いまくるエリス。これからの爽快な季節をさらにご機嫌にしてくれる名盤です。

さて先日、SPURのとある企画のリサーチも兼ねて、エル・スール・レコーズというお店を訪ねました。ここは渋谷のマンションの一室にあり、今にも止まるんじゃないかという古くてギイコギイコ言うエレベーターに乗り、「本当にココ、お店?」とドキドキしながら(笑)扉を開けると、ところ狭しと世界中から買い付けられたレコードやCD、DVD、雑誌などが並んでいます(現在は、マンションの取り壊しだとかで、一時閉店中)。そこでまたエリスに出会えました!

これは1973年のテレビ番組を収録したDVDで、歌うエリスの表情のどアップ、バックのアーチストたちの手もとのアップがずーっとひたすら流れます。モノトーンでミニマムな映像に、ときどきエリスがふかすタバコの煙がたゆたい、不思議なムードなのですが、ぐっと引き込まれるんです。”モンチッチ”のようなベリーショートの彼女が、ときどき垣間見せるくしゃっとした笑顔のせいでしょうか。彼女の繰り出す音楽が、自由で快活なパーソナリティそのものではないか、と連想させます。

(ファンの間では、「エリス&トム」というアルバムも人気ですが、これの「3月の水」という曲で彼女がくすくす笑っているかのように歌う愛らしいフレーズがあります)

ところで、そんな作品とは裏腹に、彼女は3度の結婚を経てアルコールと薬物に溺れてしまいます。そして36歳という若さで亡くなったのでした。(編集NAMIKI)

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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