光の美しい街、モロッコ・エッサウィラへ

夏休みをいただきまして、モロッコ・マラケシュに来ています。昨年10月にオープンしたばかりの「イヴ・サンローラン美術館」は本当にすばらしい施設でした。あんなに美しく創造性あふれる服を長きにわたって作り続けてきたイヴ・サンロラーンの仕事の数々に、改めて感服します。彼が買い取った「マジョレル庭園」が素晴らしいのももちろんのこと。鮮やかなモロッコらしい色彩とエキゾチックな植物群に圧倒されて、しばし無の境地で散策しました。

「マジョレル庭園」から数分歩くと、美術館にたどり着きます
「マジョレル庭園」から数分歩くと、美術館にたどり着きます

そんなマラケシュも素晴らしいんですが、その日は別の街に足を運ぶことに。モロッコから車で3時間ほどの港町、エッサウィラへ。ここが本当に素敵な街だったんです!

マラケシュのカラーはテラコッタなど乾いた赤やピンク。それに対して、エッサウィラは爽やかな青と白が印象的です。まずたどり着いたその瞬間、海辺らしい潮風がさーっと吹いていてあまりの気持ち良さに昇天寸前。人も動物たちもどこかマラケシュよりゆったりのんびりしています。街自体はコンパクトで、徒歩で回りきれるほど。メインストリートにはアルガンオイルなど土産ものの店が並びますが、こちらもマラケシュより少し価格設定は良心的な気が。適度に観光的、という印象です。ここからは、そんなエッサウィラ徘徊の末に心を射抜かれたポイント&スポットをご紹介いたします……! しばしお付き合いください。

軒を連ねる“スモール・グッド・レストラン”

メディナ(旧市街)の入り口、ドゥカラ門から続くメインストリートから一本入った小径には、かわいらしい看板が並びます。魚料理やモロッカン料理を楽しめるレストランが勢揃い。この日入店した「Chez Youssef(シェ・ユセフ)」という三階建てのレストランも大変最高でした。迷わず最上階のテラスに着席して料理をオーダー。青と白の色壁と、ほわ~とあたりを包む光、空を飛び交う自由なカモメの姿に「ここは天国か…」と空を仰ぎました。注文したのは魚のタジン鍋とフレンチオムレツ、イカの煮込み。素材の味を活かした薄めの味付けがほどよく、あっという間に完食しました。やさしい家庭料理的な趣で、ほっとする味わい。

やっぱりフルーツタルトが好き

1928年創業の老舗パティスリー「DRISS」のパンもどれも美味しかった! ショーケースにはパン・オ・ショコラや焼き菓子が並んでいて、目移りが止まらない。モロッコでの食事には必ず「マハラシュ」という平べったいパンが出てくるほど、パンは生活に身近な存在です。ここでは、フルーツタルトと餃子のような焼き菓子(名前がわからず)をコーヒーとともにいただきました。これも本当に美味しかった!

半分外、なテラス席の壁には大量の絵が掛けられています
半分外、なテラス席の壁には大量の絵が掛けられています

地元に愛される漢方薬局

そしてここが本当に訪れてよかった…!という店。小径を入った先に静かに佇む「Azurette」はローカルな人々に愛される薬局的な漢方ショップ。

壁一面にぎっしりとタイムやカルダモンなどが
壁一面にぎっしりとタイムやカルダモンなどが

祖父の代から続く店だそうで、朗らかな店主の方は3代目。一面に乾燥させたスパイスやハーブが揃い、オーダーを伝えると調合してオリジナルの茶葉セットを作ってくれるのです。レモングラスやローズフラワーなどの袋詰めは200gでも30ディルハム(約330円)ほどと驚きの良心的価格設定。さらに自家製のローズウォーター(かわいいラベルを貼ってくれます)やパフューム、ドライトマトのパウダーなどをしこたま買い込んで大満足。体調不良や美肌、など目的を伝えるとよさそうです。

(左上)聞くと色々親切に教えてくれる店主(右下)たくさん買いすぎました。200gのハーブティーは大容量! 小分けにして友人にもお土産に渡そうと思います。これで10回分ほど飲めるそう
(左上)聞くと色々親切に教えてくれる店主(右下)たくさん買いすぎました。200gのハーブティーは大容量! 小分けにして友人にもお土産に渡そうと思います。これで10回分ほど飲めるそう

ローカルフードで〆

上記の店主の方が非常に人が良くて、周囲のおすすめを聞いたら案内してくれました。シルバージュエリーの工房などに連れ出してくれた後、ローカルなエリアに。観光的なストリートから少し奥まっただけなのですがまったく異世界のよう。細い市場には鶏がひしめき、野菜がうず高く積まれ、ミントの爽やかな香りやスパイスの強い芳香がぐるぐる渦巻いていてさっきとはまったく趣を異にします。最後に「ここはローカルな人々に人気なレストランだよ」と教えてもらって俄然気になった「Chez Miloud」に入店。見事に地元の人で混み合ってました。


階段でしばし待機。めっちゃ混み合っている

モロッコといえば、な伝統的なミントティーに何かの豆の(笑)スープ、そしてクレープのような薄いパンケーキに蜂蜜をかけた三品を注文。地元の方々に混ざりながらいただきました。ミントティーも、宿泊しているリヤド(伝統的な邸宅ホテル)などでは「あとは注ぐだけ」な状態で出されましたが、ここではミントの葉と巨大な砂糖の塊ふたつをポットに入れるところから。しばらく蒸らして一旦コップに注いぎまた戻して……というプロセスを何度か踏みます。そうすると味が均一に混ざるよう。スープもパンケーキも素朴な味で美味しく、日々を暮らす人々の胃袋を支えているのだなあ、と感じました。こちらも、トータルで20ディルハムくらいで、なんと日本円で約220円……! 大満足でした。

と、色々と巡ってあっという間にマラケシュへの帰途につきました。船着場は魚の出店が並んでいて楽しいし(今回は試せませんでしたが、近くに焼き場があって買った魚をその場で焼いてくれるそう)、穏やかなビーチでごろごろしてもいい。ただ街を散策するだけでもマラケシュほど忙しくない平和なムードに癒されますし、ローカルなエリアもすぐそこ。料理はもちろんすべて美味しい。すべてがほどよく心地よい街でした。ぜひ次は長期滞在に来よう、と誓ったのでした。

エディターSAKURABAプロフィール画像
エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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