2019.07.11

共感とときめきしかない、「婚活」小説の古典

こちらは中野康司さん訳です。(ちくま文庫)

「高慢と偏見」。ジェイン・オースティンの著作で名作中の名作と言われていますが、正直、とっつきにくいタイトルですよねえ。でも、騙されたと思って読んで欲しいんです! なぜなら昔の話なのに今読んでもすっごく面白いから。サマーセット・モーム先生も「ページをめくる手が止まらない」とおっしゃったそうですが、現代人の我々もネットフリックスのドラマを一気見したり、時間がたつのも忘れてSNSチェックしたりするのと同じ熱量で、楽しめますから!

すごく乱暴に一言でいうと「ツンデレ」ラブストーリーとでもいいましょうか。舞台はイギリスの田舎。いちおう上流階級だけど上の下、という位置づけの一家に5人の姉妹がいます。長女のジェインは美人で他人を疑うことのない純真で優しい人。次女のエリザベスが主人公ですが、すごく美人というわけではないけど陽気で自身の意見をはっきり言い、機知にとんだ女の子。三女のメアリーは器量が悪いというコンプレックスから教養で勝負しようとするがいつも空回り。五女のリディアはいつもうわついていて男と買い物とゴシップのことしか考えていない。四女のキティーはリディアの影響を受けやすく流されやすい。という絶妙な設定だけでも惹かれませんか? 

エリザベスと気難しい金持ちの男性ダーシー氏を中心に、妙齢の男女がドタバタするわけですが、キーになるのが当時の価値観。自立する手段がなく、土地や財産を相続する権利も限られた女性にとって、結婚は「いい夫をつかまえられなかったら飢え死にする」くらいの大問題なんです。

以下ややネタバレあります。私がひそかに前半のハイライトだと思っているのは、エリザベスの親友であるシャーロットが、中身のないおべっか使いの男性と結婚するくだり。彼女の心情の描写は圧巻です。結婚に夢もあこがれもないし、自分が真に愛されているわけではないとわかっていながらも、「結婚は目的だった」と。27歳(当時は“行き遅れ”の域に入る)で器量もよくない自分が人並みに生きる手段は結婚しかないんだから、とキッパリ。シビアな現実に対する女性ならではの腹のくくり方には、ヒリヒリしますね。自分とは生きてる時代も境遇も違うし、架空の人物ではあるけど、体温を感じるくらいリアルな、自分と地続きの存在であるかのようです。

それでも「愛だよ、愛」と訴えかけるのが作者のジェイン・オースティン。自身も好きではない男性からのプロポーズは断ったり、「掘り出しものをみつけるために」ダンス・パーティに出かけたり。自分にとって何が大切なのか、まわりの価値観にとらわれずに主体的に。そういったモダンなまなざしがあるからこそ、今読んでも、ネット配信ドラマに負けずおとらずワクワクできるんじゃないかと。女性たちの選択のそれぞれにウン、ウンとうなずきつつ、ダーシー氏の“ツンデレ愛”にきゅんきゅん。一気に読破してしまうこと、間違いありません。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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