ラ コル ノワールのバラ色の日々

ラ コル ノワールのバラ色の日々の画像_1
photography:©Parfums Christian Dior

独占契約農家、クロ ドゥ カリアンのアルメル・ジャノディ。寒暖の差がより厳しい環境のため、彼女の畑で育つローズ ドゥ メは強靱になり、結果、芳香の深みのあるバラが生まれるという

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photography:©Parfums Christian Dior

クロ ドゥ カリアンのバラ畑より、カリアン村を望む。この村には1930年代半ば、ディオール家の別荘があったことでも知られている

クリスチャン・ディオールのクリエーションを語るにあたり欠かせないもの、それが花。なかでも花の女王であるバラをとりわけ愛していたことはグランヴィルのバラ園の素晴らしさでも明らかだけれど、ラ コル ノワールにもバラ畑がある。広大な領地内では「5月のバラ」という意味をもつローズ ドゥ メやジャスミンにラベンダー、ブドウの苗やオリーブの木々が植えられ、鮮やかに咲いた花々からは芳しいオーラが放たれた。庭園の畑で採れたいちごや野菜に舌鼓を打ち、ゲストたちにふるまった。そう、彼は土仕事を愛していたのだ。

ムッシュの夢の女性像である「フラワーウーマン」は、プロヴァンスの風に触れることでくっきりと輪郭をもったのだろう。自らのシャトーの庭で育て、また香りの古都グラースでも栽培されるローズ ドゥ メや、畑で採れる赤い実、そのひとつひとつがのちのインスピレーションとなることを、クチュリエ自身は知っていただろうか。「フラワーウーマン」を体現する「ミス ディオール」の系譜は、ここラ コル ノワールで静かに息づき始めていたのだ。

ラ コル ノワールから約18㎞のグラース。ここにディオールが原料生産の提携契約を結ぶ農家、クロ ドゥ カリアンがある。ムッシュがラ コル ノワールで愛し、また古くからグラースで栽培されてきたローズ ドゥ メを育てているのがアルメル・ジャノディ。元は文学教師だったという経歴の女性だ。5月の昼下がり、畑を訪ねるとその日の収穫を終えた彼女が待っていた。

「この時季、バラは毎日花を咲かせるので収穫は毎朝行います。開花するとすぐに茎の上の部分を折って手摘みをし、13時までに加工会社に納入してアブソリュートの抽出加工を施します」

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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