ブレないスタイリング哲学の真髄に迫る。浜田英枝の「Be You!」

あらゆる方面にアンテナを張り、常にモードの未来をキャッチするスタイリスト浜田英枝さん。「今の気分は?」と尋ねると「そろそろ能天気にパーティにでも出かけたい!」という答え。浜田さんが敬愛してやまないポップアイコンに着想を得たスタイル提案を皮切りに、"あなたはあなたであればいい"という熱いスタイリング哲学を大解剖。

Fusae Hamada
Profile
スタイリスト。広告や雑誌、カタログなど幅広く活躍。最新モードを軸にグラマラスかつ、リアルの範疇をはずさないエッジのあるスタイリングにファンも多数。フィッティングモデルやスタイリストアシスタントは常に募集中!
Instagram→@fusaehamada

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本来の着こなしに疑問を持つことがモードのおきて

浜田さんが表現するのは「ギークさと色気、ひとりの女性のなかに対極のものが共存する世界」。今なら90年代のエネルギッシュなマドンナのビスチェを思わせるボディスーツに、ストリートなスウェットパンツや白ソックスとローファーなどを自由にミックス。オーバーサイズのジャケットでソフィスティケイトするのもカギ。

ジャケット(メンズ)¥130,900(参考価格)/Diptrics(MAGLIANO) ボディスーツ¥220,000・チョーカー¥22,000/イザ(ヌメロ ヴェントゥーノ) スウェットパンツ¥35,200(スタンドアローン)・帽子¥8,800(ポロ ラルフローレン)/ジャーナル スタンダード 自由が丘店 ローファー¥139,700(予定価格)/チャーチ クライアントサービス(チャーチ) ソックス/スタイリスト私物

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トラ柄やスパングルはナルシスティックに着る

アニマル柄の可能性は無限大。スポーティなジャージ素材のジャケットはトラ柄プリントながら、白く細いパイピングを施した品のあるデザイン。パーティ気分をハートのバッグ、レースのつけ襟、スパングルのパンツでポップ&ヘルシーに表現。白いソックスとスニーカーで品よく仕上げたい。

ジャケット(メンズ)¥170,500・ハートバッグ(メンズ)¥231,000(ともにセリーヌ オム バイ エディ・スリマン)・クロップド ビスチェ¥121,000・サイクリングパンツ¥242,000・ソックス¥12,100・スニーカー¥105,600(すべてセリーヌ バイ エディ・スリマン)(すべて予定価格)/セリーヌ ジャパン レースネックアクセサリー¥23,100/ジャーナル スタンダード 自由が丘店(スタンドアローン)

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ポップでハッピーでゴージャス!自己満足こそ、装う楽しみ

ピースマーク柄のパレオやスパングルトップス、ラメのプラットフォーム……気がつけば、平和で能天気なアイテムに心を奪われていたという浜田さん。混迷を極める世の中だからこそ、ふとキャッチーなテーマに立ち返りたくなるときもある。そこでこのスタイリングへとたどり着いた。思わず踊り出したくなるルックで、はい、ピース! 

フリンジトップス¥77,000・スパンコールベアトップ¥152,900(参考価格)・パレオスカート¥123,200・スパンコールミュール(参考色)¥138,600・アイウエア¥63,492/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ) ピアス¥7,700/ジャンティーク タイツ¥1,600/ぽこ・あ・ぽこ

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毒気はありながら、どこかピースフルな人でいたい

「媚びていない人が好き」という浜田さん。その芯の強さを新進気鋭ブランドのMeryll RoggeのシルクブラウスやMaison J.Simoneのアニマルプリントパンツで表現。たっぷりとしたフレアに大胆なスリットを加えたデザインは主役級の存在感を放つ。パンチのある柄×柄を楽しめる度量の大きさも必要。

シルクブラウス¥143,000/KALMA(Meryll Rogge) パンツ¥57,200(参考価格)/Hi65(Maison J.Simone) ネックレス¥125,950・ブレスレット¥74,030/トムウッド プロジェクト(トムウッド) ピアス¥3,300/OTOE ミュール¥123,200/ジャンヴィト ロッシ ジャパン(ジャンヴィト ロッシ) ソックス¥1,100/ぽこ・あ・ぽこ

ハマペディア2022
モード街道を猛スピードでひた走る、浜田さんってどんな人? SPURの誌面や、本人&スタッフの証言から見えてくる浜田語録

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石岡瑛子さんのようにどこまでもこだわり抜く

クリエイティブディレクター石岡瑛子さんにオマージュを捧げたページ。「浜田さんは洋服の見せ方へのこだわりという域を超えて、着ている人の意志をも感じさせる世界を作ります。この撮影はその意志にみんなで引っ張られた。粘り強さも相まって、結果的に完成度も上がるんですよね」(ヘアアーティスト西村浩一さん)。「海岸での撮影で、太陽が出る一瞬前に、大きな犬がワンと吠えて去っていったんです。そこで『石岡さんから活を入れられたような気がする』と浜田さん。その一言で撮影現場の空気が激変しました。浜田さんと撮影していると、ものづくりを完成させる最後のピースがぴたりとはまるような魔法の瞬間があるんです」(エディター小倉倫乃さん)

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モードの神が降りてくる。着想源はどこからでも

「デジタルで何でも簡単にアクセスできる時代になって、そこに対向するには熱意しかないと思ってます」と浜田さん。"何者でもないけど、何者にもなれる"というテーマに対してのビジュアルを考えたときに思い浮かんだのはある聖なる存在。そこに美の価値は自分で決めるという強い意志が込められている。

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圧倒的な自信があれば圧倒的に着こなせる

「マドンナは大好きなポップアイコンのひとり。なかでも1993年のワールドツアーは大好物。彼女のタフさ、堂々とした姿、大黒柱感に圧倒されます。性差なんて関係ないよねと、みんなに理解させるには超越した自信がないと」(浜田さん)。今回のファッションストーリーのイメージソースにもなったマドンナは官能性があり、かつスポーティでヘルシー。このアッパーさが今の時代において次なるトレンドになるのではと浜田さんは予感している。

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ファッションに熱狂したときの気持ちを思い出させるもの

浜田さんのワードローブから「永遠」をキーワードに掘り出したのが、マルタン・マルジェラ本人がデザインを手がけていた頃のライダース。「たとえ袖を通していなくても、手もとに置いておきたいと思う服があります。2000年に買ったライダースはオーバーサイズ、ペイントを配したもの、スタンダードなタイプと3種類も買ってしまいました。服を通して実験的な世界観を生み出していたので、手にとった人すべてにそのスピリットがより伝わる。そんな関係性に熱狂したことを忘れられません」(浜田さん)

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時事ネタさえもヒントに新たなスタイルを生む

2020年、とある大富豪の子どもが「X Æ A-12」と名付けられたことからひらめいたスペースエイジの肖像。ともすれば古くさく見えてしまうロックTシャツの着こなしをネクストレベルに刷新したいというのがこのテーマの肝だ。「ヘヴィメタルックを今までの焼き直しではなく、次の次元で表現したいと思ったんです。メタが生まれる前から、メタ的なことを考えていたのかも(笑)」

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打ち出しの強い柄をたやすく手なずける

「名前が浜田なもので、SPURの特集では浜ヒョウとか浜トラとか、語呂よく表現されていて、意外と楽しんできました。もともと打ち出しの強いアイテムが好き。ヒョウ柄もそのうちのひとつです。実際に着るとなると、自分の手の届くものでないと楽しめない。だから、リアルファーじゃなくてフェイクファーだったり、プリント柄の小物だったりと工夫した記憶がありますね」(浜田さん)。2009年のこの記事は、目ざとい海外ブロガーがウェブにアップしたことで、浜田さんのスタイリングがグローバルに話題となった。

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モードの先進的な価値観を具現化する

「性差も年齢も越え、着たいものを着るという"シェアワードローブ"という考え。今では常識ですが、当時はまだ目新しく、浜田さんの提案で特集が実現したんです。男性が身につける女性の服やパールやスパングル、子どもと大人がシェアする服とチャレンジングな企画でしたが、結果大成功!」(編集K)。この撮影を担当したフォトグラファー土屋文護さんも証言。「浜田さんはコーディネートを組むだけではなく、そこから写真でどう見せることが正解なのかというディレクションまできちんと考えるタイプ。そこまでやるからこそ、難しいテーマでも乗り越えられるんですよね。そして常に『できないことはない』と僕らスタッフを信じてくれるのも力になります」

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実験を重ねることで新しいスタイルを導き出す

フィッティングモデルに着せながら何通りものスタイリングを考察するのが浜田流。グランジを大人のモードに昇華したテーマも、その実験の賜物。メイクアップアーティストの津田雅世さんはその真摯な姿に心打たれるという。「浜田さんはどの撮影でもこの企画を成功させたいという気持ちと責任感がとても強いので、アイデアを広げたいといつも全力でぶつかっています。撮影チームの力も信じてくださっていて、私たちもいつも感化されています」

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白は最強の色。どんな服も気高くまとめあげてくれる

浜田さんのスタイリングに欠かせないのは白いソックス。「日本には着物の足袋がありますが、白いソックスってそれに通じる気高さがある。スタイリングが決まらないときは白いソックスが助けてくれます。写真は私物の3トップ。アメリカンアパレル(右)が大好きで、日本撤退の際は買い占めたほど。コム・デ・ギャルソン(左)は生地感が上品で貴重ですし、最近ではH&M(中央)のリブ具合が好みですね」(浜田さん)

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セレブリティの私服スナップはInstagramの先駆け

Instagramが上陸する以前から、海外のブログサイトやコレクションスナップをチェックするのが日課だったという浜田さん。「ミーハー心がありすぎて、セレブの私服スナップを熱心に追いかけていた結果、SPURの連載コラムのご意見番にまでなってしまいました。クロエ・セヴィニーやオルセン姉妹が自分の長所・短所を研究し、おしゃれに洋服を着こなす姿は仕事にももちろん、自分で着るときの参考にもなったんです。他人の私服が見たいという欲求って、Instagramの流行よりもっと前からあったんですよね」(浜田さん)

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ベーシックだからこそ色気の魔法を加えたい

2010年の特集ではベーシックアイテムにひとひねり加えて着こなすというテーマを担当。「12年も前ですが、やりたいことは今と何ら変わってない。メンズライクなボタンダウンシャツにショート丈のニットパンツや黒いストッキングで色気を加えて裏切りを差し込んだり……。天邪鬼で欲張りな性格はずっとそのまま。あまたある洋服をどう組み合わせて着ると、ありきたりなものにならないかと今でもグルグルと考え続けている感じなんです」(浜田さん)

SOURCE:SPUR 2022年7月号「浜田英枝の『Be You!』」
styling: Fusae Hamada photography: Bungo Tsuchiya 〈TRON〉 hair: Koichi Nishimura 〈VOW-VOW〉 make-up: Masayo Tsuda 〈mod’s hair〉 model: Alesya edit: Michino Ogura

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