去る4月1日、メゾンの核となるコードをひもとくプロジェクト「MaisonMargiela/folders」の幕開けとして、上海で初めてショーを開催したメゾン マルジェラ。会場は北部の港湾エリア・宝山区にあるコンテナ埠頭。2026-’27年秋冬コレクションとして、「アーティザナル」とレディ・トゥ・ウェアを同時に発表した。翌日から始まったのは、3都市を巡りながらメゾンのコードを探究するエキシビション。

中国各都市で、 【メゾン マルジェラ】が示した世界観とは

去る4月1日、メゾンの核となるコードをひもとくプロジェクト「MaisonMargiela/folders」の幕開けとして、上海で初めてショーを開催したメゾン マルジェラ。会場は北部の港湾エリア・宝山区にあるコンテナ埠頭。2026-’27年秋冬コレクションとして、「アーティザナル」とレディ・トゥ・ウェアを同時に発表した。翌日から始まったのは、3都市を巡りながらメゾンのコードを探究するエキシビション。

メゾン マルジェラ「アーキタイプ:トレンチコート」と題されたコンテナ

「アーキタイプ:トレンチコート」と題されたコンテナ。ジョン・ガリアーノが手がけたトロンプルイユ・トレンチをはじめ、名作を展示した

上海では雁蕩路にコンテナを並べ、「アーティザナル」をテーマに58体のクチュールルックを展示した。マルタン・マルジェラが手がけた1989-’90年秋冬コレクションのポーセリンプレートのウエストコートから、最新コレクションの蜜蝋加工を施したドレスまで、アルチザンを称えるメゾンの歴史を一挙にたどる内容だ。

メゾン マルジェラ 「アーティザナル」ドレス

中国発祥のポーセリンを称えて。手作業で陶器の破片を縫いつけた、「アーティザナル」ドレスが登場

メゾン マルジェラ レディ・トゥ・ウェアのルック 

レディ・トゥ・ウェアのルック。匿名性を象徴するマスクが印象的

続いて成都のThe Third Avenue Art Museumでは、「タビ」コレクターズエキシビションを開催。1989年春夏、日本の足袋から着想を得て誕生したこのアイコンシューズは、これまでメゾンにとっての実験の場、そして視覚言語のキャンバスであり続けてきた。幾度となく再解釈を重ね、無数のバリエーションが生み出されてきたこの不朽の名作は、多くの人々のワードローブに並び、今では自己表現の一部にもなっている。エキシビションでは、「タビ」を愛するコレクター9名の個人コレクションを集めて展示。ブースごとにそれぞれのパーソナリティが表れ、シューズと個人との結びつきを垣間見られる空間となっていた。

メゾン マルジェラ ミュージシャンMenthaeのブース

ミュージシャンMenthaeのブース。クローゼットを背景に個人所有の「タビ」ブーツが並ぶ

最終章を飾るのは、深圳で開催された「ビアンケット」アトリエエクスペリエンス。「ビアンケット」とは、筆跡を残しながら塗料を塗り重ね、ものの表面を白いキャンバスへと変える技法のこと。会場では没入型のアトリエ体験が提供された。参加者には、メゾンのスタッフが普段着用しているものと同じ白衣が貸し出され、アトリエチームの指導のもと自前のワードローブに「ビアンケット」を施すというプログラム。自らの手で、洋服をハウスコードへと変容させられる貴重な機会とあって、会場はもとよりSNSでも大きな盛り上がりを見せた。

メゾン マルジェラ 「ビアンケット」技法を施したウェアの数々

「ビアンケット」技法を施したウェアの数々

今回の「MaisonMargiela/folders」はすべて無料で開催された。大きく門戸を広げた一連のエキシビションで、メゾン マルジェラが試みたのは対話。メゾンの思想と世界観を伝えるための前代未聞のチャレンジだった。このプロジェクトの展示風景や製作過程の記録など、ありとあらゆるアーカイブスはDropboxフォルダで一般に公開されている。これは完成品を届けるだけにとどまらず、アイデアが生まれる瞬間から製作プロセスまでを広くコミュニティと共有するかつてない試み。門戸は世界に向けて開かれている。「メゾン マルジェラとはいったい何なのか」。語りかけてくるメゾンの声に今後も耳を傾けたい。

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/