シャネル特有のコレクション「メティエダール」を支えるのは複合施設le19Mにアトリエを構える「メゾンダール」の数々。普段は表に出ない職人たちを訪ねて、話を聞いた
シャネル特有のコレクション「メティエダール」を支えるのは複合施設le19Mにアトリエを構える「メゾンダール」の数々。普段は表に出ない職人たちを訪ねて、話を聞いた
原図の魅力を残しつつ、再解釈する
ルサージュに入った経緯を教えてください。
私は、クチュールのアトリエの雰囲気を感じられる環境で育ちました。ただ祖父母はミシンの販売を、母はパタンナーをしていたのに対し、私が求めていたのはもっとアーティスティックな何か。最初はデッサンやデザインを学んでいましたが、刺しゅうの世界を知ってからは没頭しましたね。学校を卒業するとパリのいくつかのアトリエで経験を積み、「セシル・アンリ」で刺しゅうデザイナーをしていたとき、ルサージュから声をかけてもらって、今の職についたんです。
あなたの仕事は具体的にはどういう工程から成っていますか?
一言で言うと、刺しゅう職人のための仕事を準備し、コーディネートすることです。まずはフリーハンドで、またはコンピューターを使って図案を描きます。そして図案を描いた紙を服の形に組み立て、配置を決めます。次は、トレーシングペーパーに描かれた図案に電動針を使って針を刺す穴を開ける作業。それを素材となる布にのせ、特殊なパウダーでデザイン画を転写します。こうして初めて、実際の刺しゅうができる準備が整うのです。
今回の刺しゅうについて詳しいことを教えてください。
もともとの図案はシャネルの1930年代のアーカイブスからデザインチームが選んだ、ピオニーの大輪を描いたものです。私たちはそれを再解釈し、フリンジを加え、素材に溶け込んでフェードアウトするような効果を狙って微妙なトーンに調整しました。デザインチームが求めていたのは、原図の魅力を残しつつモダンさを感じる刺しゅう。ルサージュのアーティスティック ディレクターであるユベール・バレール、そしてデザインチームと数度にわたるやり取りを重ねて、ヴィンテージ感と新しさのバランスが取れた仕上がりになりました。
仕事では、どんなことにやりがいを感じますか?
サヴォアフェールとクリエーションの両方に関われること。デザイン画と刺しゅう職人とのかけ橋になれること。私の仕事には、難しい刺しゅうを実現するための解決策を見つける、職人の仕事をスムースにする、といった側面も含まれます。結局のところ、刺しゅうには人の手が、そして人間関係が大切ですから。
ここでの仕事は、あなたにとって何を意味していますか?
le19Mの一員として、大切な役割を担っていると感じています。ルサージュには100年余りの歴史がありますから、刺しゅうサンプルのアーカイブスも、7万点以上。ルサージュでは他メゾンの仕事も請け負いますが、外部のクライアントと違って、マチューのチームはクリエーションのアイデアを求めて私たちに会いに来てくれます。特にメティエダール コレクションはサヴォアフェールを全面に打ち出しているし、デザインチームと直接たくさんのやりとりをするので、やりがいがありますね。
クララ・デュポン●パリのデザインスクール、デュペレで刺しゅうを学ぶ。いくつかの刺しゅうアトリエを経て、3年前よりルサージュの図案部門の責任者に。


