シャネル特有のコレクション「メティエダール」を支えるのは複合施設le19Mにアトリエを構える「メゾンダール」の数々。普段は表に出ない職人たちを訪ねて、話を聞いた
シャネル特有のコレクション「メティエダール」を支えるのは複合施設le19Mにアトリエを構える「メゾンダール」の数々。普段は表に出ない職人たちを訪ねて、話を聞いた
ボリューム感が新しい、ポップコーン刺しゅう
この仕事はどういう経緯で始めましたか?
若いときから絨毯職人として働いていましたが、体力の要る仕事で、もっと繊細な何かをしたいと思い始めました。その頃たまたま見た、モードの世界のメティエダールを総括した本で魅せられたのが、とてもクリエイティブな刺しゅう。それで刺しゅうの基本を習おうと、専門学校に通い、パリ市の夜間コースも取ったんです。卒業後、多様な素材使いとボリュームのある刺しゅうで定評のある、憧れのモンテックスに入ることができました。
あなたの仕事の、具体的な内容を教えてください。
サンプルづくりです。デザインチームから求められたことを具現化するのが先決ですが、アトリエ モンテックスのアーティスティック ディレクターであるアスカ・ヤマシタを通じて、こちらから技術を生かしてのアイデアを提案することも多々あります。それはモンテックスのエスプリでもあるので。
あなた独自のスタイルと言えるものはありますか?
基本的な、いわゆる針刺しゅうやかぎ針を使う伝統的なリュネヴィル刺しゅうの技術はものにしています。でももっと新しいことに挑みたくて、レパートリーの範囲をデコパージュやコラージュにも広げたんです。硬い素材に針を通すためのツール、ドレメルの使い方もマスターしました。技術を開拓したり思いがけない素材を試したりすることもよくあります。
今回の刺しゅうについて詳しいことを教えてください。
ラフィアを取り入れた、ボリュームのあるポップコーン刺しゅうです。ラフィアを使うことは新しくはないですが、アーカイブスからのサンプルを基本に、結び目やビーズを加えてボリュームを出しました。つまり平面の図案を、立体的に仕上げたのです。ラフィア自体は針を通すと裂けてしまいますから、布の表側にモチーフのラインを描くように置き、糸でラフィアを固定していきます。さらに、ニュアンスのある色合いも加えました。
困難に直面したら、どう取り組みますか?
まずは自分のやり方を見直し、同僚たちとも話し合います。
いい職人でいるために心がけていることは何ですか?
刺しゅうに限らず、いろいろな分野に関して常に新しいことに目を向けています。ですから展覧会にはよく出向きますね。そして毎日欠かさないのは、手仕事。刺しゅうとあまり遠くはありませんが縫い物、そして料理、日曜大工まで。新しいツールを試すのも楽しいですね。基本に立ち返るのも大切ですから、25,000もある自社のアーカイブスも参照しますよ。
メティエダール コレクションのやりがいは何ですか?
私たちの腕の見せどころであり、クリエーションに参加して自分なりの表現ができる機会でもあるので、励みになります。もっともっと新しいことをやっていこうという気持ちにさせてくれるんです。
アガート・クリノン●専門学校で刺しゅうを習得。14年前に入社し、Studio MTX 部門(現在は独立してle19Mの一部)の、次いでアトリエ モンテックスの試作を担う。


