2026.07.17

知らない街を訪れるように、一杯のカクテルを楽しむ。フェアモント東京で出合う台湾のバーカルチャー

世界のトップバーテンダーを招く「カクテルセッションズ」が、まるで旅をするように各国のバーカルチャーに触れられるイベントとして話題を呼んでいる。企画するのは、フェアモント東京のバーディレクター・齋藤秀幸氏。

フェアモント東京は、世界屈指の名門バーを擁するアコーホテルグループのひとつ。その精神を受け継ぐ中核となるバー「DRIFTWOOD」を舞台に、世界中の才能が集い、新たな出会いを生み出している。

世界のトップバーテンダーを招く「カクテルセッションズ」が、まるで旅をするように各国のバーカルチャーに触れられるイベントとして話題を呼んでいる。企画するのは、フェアモント東京のバーディレクター・齋藤秀幸氏。

フェアモント東京は、世界屈指の名門バーを擁するアコーホテルグループのひとつ。その精神を受け継ぐ中核となるバー「DRIFTWOOD」を舞台に、世界中の才能が集い、新たな出会いを生み出している。

INDEX

世界のバーカルチャーを東京へ運ぶ仕掛け人

台湾バーテンダー セブン氏によるカクテル 左「BRINE&EMBER」右「DRIZZLE NIGHT」

フェアモント東京「DRIFTWOOD」で提供された、台湾からのゲストバーテンダーによるカクテル。ウイスキーにスモークオリーブオイルや蜂蜜を合わせた「BRINE&EMBER」(左)は、燻香とほのかな塩味がウイスキーの奥行きを引き立て、蜂蜜のやわらかな甘みが余韻を包み込む一杯。「CHOCOLATE BONBON」(右)は、カカオに鉄観音烏龍茶とシェリーを合わせることで、チョコレートの甘さを前面に出すのではなく、カカオ本来の奥深い風味と心地よいほろ苦さを引き出している。鉄観音の華やかな香りとシェリーの複雑な熟成感が重なり、豊かな味わいを楽しめる。

そのバーシーンを率いるのが、バーディレクターの齋藤秀幸氏。ロンドン、ニューヨークなど5カ国で経験を積み、バーテンダーの世界大会ではトップ8入りを果たした実力者。帰国後はラグジュアリーホテルのバー立ち上げに携わり、手がけたカクテルメニューが世界的なバーランキング「The World's 50 Best Bars」で世界トップ3に選出されるなど、その手腕に定評がある。

「海外からゲストバーテンダーを招くことで、ホテルの中にバーカルチャーを根付かせたいと思っています。同時に、お客様には普段出合えない非日常の体験を届けたいですね」と齋藤氏は語る。

フェアモント東京 バーディレクターの齋藤秀幸氏

フェアモント東京 バーディレクターの齋藤秀幸氏

「カクテルセッションズ」のゲストとして招くのは、齋藤氏自身が信頼を寄せるバーテンダーたちだ。「自分が実際に感動した体験を、お客様にも味わってほしい。その思いが選定の基準です。ときには私自身も未体験の世界を、お客様と一緒に楽しみたいという理由でお招きすることもあります。だからこそ、毎回新しい発見があります」

今回選ばれたのは、台湾・台北の人気バー「Le Room」を率いるセブン氏。齋藤氏自身もゲストバーテンダーとして訪れたことがあり、その独創的な世界観に魅了されたひとりだ。

フェアモント東京のドリフトウッド

シャンデリアが輝く「DRIFTWOOD BAR」。テラス席もある。

台湾の山・海を感じるクラフトカクテル 

知らない街を訪れるように、一杯のカクテルの画像_4

台湾「Le Room」のシグネチャーカクテルのひとつ「Mountain」。プロジェクションマッピングに香りや音楽を組み合わせたイマーシブな演出とともに提供され、一杯のカクテルを五感で味わう劇場型のカクテルサロンとして高い評価を集めている。

ゲストバーテンダーのセブン氏は台湾・台北で3店舗「Le Room」、「Suki Salon」、「MAD HOUSE」を展開。彼のカクテルの特徴は、飲み物を超えた体験としてのカクテルを提供すること。メニュー表は台湾の地形をかたどっており、山と海にまつわる素材名がリストに並ぶ。現地では、プロジェクションマッピングを使いながら、香りや音楽を含めたイマーシブな演出を行う劇場型のカクテルサロンだ。

「WAVE BREAKER」

海をイメージした一杯「WAVE BREAKER」。ジャパニーズウォッカにワサビ、ディル、スイカのピールを合わせ、グラスに添えられた海苔とともに味わう。ワサビのほのかな辛みとディルの爽やかなハーブ香、スイカの皮がもたらすみずみずしく甘い香りが重なり、海苔の旨みがアクセントとなって、まるで潮風を感じるような清々しい余韻を演出する。

その没入型の体験は、日本で開催されたゲストイベントでも垣間見ることができた。海をイメージした「WAVE BREAKER」は、ウォッカをベースにワサビやディル、そしてスイカのピールを組み合わせた一杯。グラスには海苔が乗せられ、その香りを感じ、味わうことで、海辺にいるような感覚を演出するものだ。

「BRINE&EMBER」

「BRINE & EMBER」には、カラスミを添えて提供。ガストロノミーのバックグラウンドを持つ「Le Room」のセブン氏ならではの発想で、香りや味わいだけでなく、食材との組み合わせを含め、五感を通して一杯を完成させる体験がデザインされている。

一方、「BRINE & EMBER」は、ウイスキーと炭の香りを移したオリーブオイルを合わせたカクテル。グラスにはカラスミが添えられ、それをかじりながら飲み進めることで、味わいに新たな奥行きがうまれる。香りや食感に、予想外の味わいも一つのグラスに重ねることで、台湾の風土や食文化までも想起させる。それは美味しさを味わうだけではない、一杯を通じた体験そのものだ。

ガストロノミーから生まれたバー体験

セブン氏

フェアモント東京でゲストバーテンディングを行うセブン氏

こうした体験設計には、セブン氏のガストロノミーの世界で培った経験が色濃く反映されている。フレンチの巨匠ジョエル・ロブションの台北店でレストランマネージャーを務め、料理やペアリング、サービス哲学を学んだ経験が、現在のバーづくりの礎となっている。 バー業界へ転身後は、スピークイージー(隠れ家)スタイルの「Le Kief」をオープン。さらにペアリングをテーマにした実験的なバー「Room by Le Kief」を立ち上げるなど、ガストロノミーとカクテルの融合を追求しながら、現在のスタイルを築き上げてきた。

なぜ今、台湾のバーカルチャーが注目されるのか

知らない街を訪れるように、一杯のカクテルの画像_8

台湾ではお茶を使ったティーカクテルが人気を集めているが、セブン氏の一杯は、そこにもうひとひねりの香りの演出を加えたもの。アイリッシュウイスキーにブラックティーを合わせた「TEA HIGHBALL」は、杉の香木で燻した香りをまとわせることで、まるで森の中にいるかのようなウッディでスモーキーなアロマを表現。紅茶のやわらかな渋みとウイスキーのコクが重なり、奥行きのある余韻を楽しめる。

そんなセブン氏にとって、今回のフェアモント東京でのゲストバーテンディングは特別な機会となった。

「フェアモント東京は以前からぜひ訪れたいと思っていた場所でした。その1周年という節目にゲストシフトができたことを、とても嬉しく思っています。東京は数えきれないほど来ているのですが、いつでも新しい刺激を受ける街です。来るたびに新しいクリエイティブなアイデアを運んでくれます」

アジアのバーシーンに目を向けると、近年は台湾の存在感が急速に高まっている。その背景について、セブン氏は次のように語る。

「ここ数年、台湾のバー業界は世界の舞台で認められる可能性を追い求めてきました。世界から見れば小さな存在かもしれませんが、私たちは五感を使ってあらゆる知識や技術を吸収し、それを台湾ならではの表現へと昇華させています。台湾はバーテンダー同士が切磋琢磨しながら互いを支え合う文化があります。そのコミュニティの強さが、シーン全体の成長に繋がっているのだと思います」

バー初心者こそ訪れたいゲストシフト

「CHOCOLATE BONBON」

テキーラにジャスミンティー、柚子、ベルガモットを合わせた「DRIZZLE NIGHT」。ジャスミンの華やかな香りに柚子の爽やかな酸味とベルガモットのほろ苦い柑橘香が重なり、軽やかでエレガントな味わいに仕上げられている。

こうした海外ゲストバーテンダーイベントは、実はバー初心者にとっても行きやすく、新しいバーと出合うきっかけにもなる。

「ゲストバーテンダーのことを知って来店される方も多く、常連のお客様だけでなく、新規のお客様が多いのも『カクテルセッションズ』の特徴です。苦手なものや好みを伝えていただければ、お一人おひとりに合った一杯を提案できます。新しい体験ができる場所として、ぜひ気軽にいらしていただきたいです」と齋藤氏は語る。

次回イベントは8月20日(木)。ジャカルタ「Modernhaus」が日本で初となるゲストイベントを開催。インドネシアの豊かな自然をグラスに映し出すような独創的なカクテルで知られる彼らの世界観を、日本で体験できる貴重な機会となりそうだ。

DRIFTWOOD BAR/フェアモント東京

住所:東京都港区芝浦1-1-1 フェアモント東京 43F
電話:03-4321-1111
営業時間:月〜土17:30-24:00 日18:00-24:00 ともに(L.O.23:30)
定休日:不定休