尊重されるべき意思がある 知っておきたい、「性的同意」のこと PART 3

最近頻繁に耳にするようになった「性的同意」というワード。テレビの向こう側にあるニュースの世界だけではなく、大人になった私たちの日常とも密接に関わっている。誰しもが尊重し合う社会のために、その必要性を再確認したい。※本特集内には、性的同意に関連する被害の描写が一部含まれています。フラッシュバックなどの心配がある方は注意してご覧ください。

PART3 未来のためにできること

「性的同意」のスタンダードを更新するには、性教育の拡充が欠かせない。これから大人になる次世代のために、そして私たち自身が変わるために。シオリーヌさんに話を聞いた。

シオリーヌさん
しおりーぬ●助産師/性教育YouTuber。総合病院産婦人科病棟、精神科児童思春期病棟勤務を経て性教育について発信。近著に『もやもやラボ キミのお悩み攻略BOOK!』(小学館クリエイティブ)。

性教育の基本は、「人権教育」。日本ではそれを教わるチャンスが足りていない

私たちはそもそも、性行為に対する正しい知識を誰かに教わったことがあったのだろうか。
「ユネスコが中心となり作成された『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2009年初版、2018年に第二版を発表)によると、"性教育"には人間関係やジェンダーに関する理解、性暴力や安全を確保するスキルについてなど、社会の中で人と関わり合いながら生きていくための性の幅広い知識が包括されています。
ガイダンスでは5歳から性教育を受けるのが望ましいとされていますが、日本で性教育がスタートするのは小学校3年生。そもそも世界の基準と比べて教育機会が大幅に足りていないのです。また中学校の学習指導要領を参照すると"受精から出産まで"が範囲で、性行為については教科書で触れられません。
つまり、はじめに触れる性行為の情報がポルノになるということも大いにあり得る。自分が嫌な思いをしない、人にも嫌な思いをさせないためには、"相手を尊重する"ことを前提とした人権教育が必要ですが、日本の性教育ではそれを学ぶチャンスがないのが現状なんです」

まずは自分自身が性に向き合う。学び直して、正しい知識を身につけること

日本で教育を受けてきた場合、性に対する知識が圧倒的に足りていないという現状を踏まえたうえで、私たちはまず何から始めたらよいのだろう。
「まずは、大人が性に対しての価値観を変えることが大切だと思います。性的同意についてどう捉えるべきか、という話のもっと手前で、まだまだ性的な話題に対して嫌悪感があったり、『性にまつわるトピックスは表立って語るべきではない』という考えの人も多いのが現実なのではないでしょうか。
大人が感じているその後ろめたさや恥ずかしさは、必ず子どもにも伝わります。隠すべきもの、恥ずかしいものという価値観がある限り、関連する問題も水面下で広がってしまうでしょう。必要なのは、性についてのトピックスに慣れることです。
今は正しい知識を得るためのコンテンツがたくさんあるので、まずはそれらに触れてみるとよいのではないでしょうか。大人がきちんと性に向き合って、改めて性教育を学び直すことで知識を得て理解を深めたうえで、初めて子どもたちに正しい認識を伝えられます」

大人がプライベートゾーンを尊重すると、子どもも「自分を大切にすること」を理解できる

未来に被害者も加害者もつくらないために、自分の子どもや親戚など、周りにいる子どもたちと接する際に気をつけるべきことについても教えてもらった。
「『自分のことを大切にしなさい』とよく言いますが、他人に大切にされないとそれが何を意味するのか実感が持てないと思います。そのために周りの大人が、子どもを自己と同一化せず一人の人として尊重すること。
悪気のないスキンシップでも、子どもが嫌がっていたらキスやハグをしないことも大切で、決して悲しんでみせたり怒ってみせたりしないでください。『自分の体は自分のもので、拒否をしても相手との関係性は壊れない』という、自分の権利を当たり前に尊重する認識をつけるためです。また性に関するトピックスを変に隠そうとせず、必要な正しい知識にアクセスできる環境づくりも必要。
下で紹介した本や動画を参考にしてくださいね。また『最終的にはあなたの味方だよ』と伝え、たとえ何かショッキングな出来事を報告されたときにも『話してくれてありがとう』と言える心構えを持ちましょう」



大人も子どもも性について楽しく学べる本やコンテンツをガイドに

『だいじ だいじ どーこだ?』
遠見才希子著/川原瑞丸イラスト(大泉書店/1,320円)
産婦人科医の遠見才希子先生が、自身の子ども(当時2歳)とのエピソードを交えながら、主にひらがなを使って正しく性について伝える絵本。性教育の基本である「プライベートパーツ(口や胸、性器)」を理解し、自分も他人も大切な存在だということを認識できるようになるための話がやさしい絵とともに綴られる。後半には大人のための知識ページで、性被害に対する相談窓口なども紹介されている。


出典 https://youtu.be/nBnQ5Zy4P7g

『AMAZE』
(YouTubeチャンネル『ピルコン【PILCON】』にて配信中)
アメリカのNGO「AMAZE.org」が制作した、子どもたちに性の健康や豊かな人間関係について、楽しく信頼できる情報を届けるアニメーション。ジェンダー意識や性的同意、妊娠の仕組みや性被害まで、あらゆるテーマを扱い、大人も子どもも楽しんで学べる。さまざまな言語に翻訳され、世界中の子どもや若者、保護者や教育・医療関係者に活用されている。日本語版は、AMAZE.orgの許可のもと、正しい性の知識と判断力を育む支援を行うNPO法人ピルコンが制作。©AMAZE.org 日本語訳:NPO法人ピルコン

『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』
シオリーヌ(大貫詩織)(イースト・プレス/1,430円)
シオリーヌさんの著書から、中高生や大人が学校で習っていない性教育を学び直すのにおすすめな一冊を。生理・射精の仕組み、生理用品、妊娠の起こる仕組み、正しい避妊方法、性的同意、女らしさ・男らしさ、ルッキズム、セクシュアリティ、SNSとのつき合い……など、幅広く38のトピックスを収録。イラストや写真も交えて、性にまつわる疑問に対しての正しい知識が丁寧に解説されている。関連動画(YouTube)へのリンクや、困ったときの「相談窓口一覧」も掲載。



SOURCE:SPUR 2021年12月号「知っておきたい、『性的同意』のこと」
illustration: Naomi Nose interview & text: Rio Hirai, Miho Oashi

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