2026.06.26

女性プロデューサーの第一人者が語るアイドルシーンの変化【平成ノブシコブシ 徳井健太さん×福嶋麻衣子さん対談】

ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく

ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく

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ステージに立ったら“ニン”は隠せない

平成ノブシコブシ 徳井健太 福嶋麻衣子

福嶋さん(以下、福嶋) 徳井さんとお会いするのは初めてですが、いつも拝見しています。私は中学生のときにすごくお笑いが好きで、「バカ爆走!」や「シアターD」に通い詰めていたんですよ。

徳井さん(以下、徳井) なるほど! ボキャブラ世代ですね。

福嶋 徳井さんはどういうアイドルがお好きなんですか?

徳井 一番夢中になっていたのは、2010年代前後、ももクロ(ももいろクローバーZ)がグイグイ来ていた頃ですね。でんぱ組.incも人気を高めていましたけど、あの時代は追っていてすごく面白かったです。

福嶋 当時は、アイドル戦国時代といわれていました。

徳井 もふくさんは女性プロデューサーの先駆者ですよね。あの頃、女性の育成者は、まだあまりいなかったんじゃないでしょうか。

福嶋 当時は珍しかったと思います。

徳井 しっかりしているアイドルって、プロデューサーは男性でも、敏腕な女性マネージャーがいることが多い気がします。プロデューサーでもマネージャーでも、女性がそばにいるほうが絶対にいいと思うんですよね。

福嶋 ディアステージのマネージャーは9割女性ですね。私も採用面接を担当するんですが、タレントに友達のような態度で接するような人は、女性であっても厳しい目で見てしまいます。

徳井 メンバーと接するときは、どんなことを意識していますか?

福嶋 相手によって悩みも考え方も違うので、一人ひとりに目線を合わせて対話することを大切にしています。芸人さんって〝ニン(生まれ持った魅力)〟が大事といいますよね。それはアイドルも同じだと思うんです。ステージに立ったらニンは隠せないし、別のキャラクターを演じていても透けてしまう。でんぱ組なんかは、その最たる例です。最近は「プロデュースなんておこがましいな、私は素材に塩をかけているくらいだな」と思ったりします。

徳井 でも、いいトマトに塩をかけるとよりおいしくなりますからね。あえて砂糖をかけてみたり、いろいろトライしたから今があるんだと思います。でんぱ組の古川未鈴さんもそうだったけど、最近は結婚や出産をしたあとも活動を続けるアイドルが増えているじゃないですか。いっそオープンに語って、ある種エンタメに昇華させることで、さらに女性ファンを増やせるのでは?と思いました。

古川未鈴

古川未鈴:でんぱ組.incの立ち上げ時から在籍する唯一のメンバーであり、グループの中心的存在。ゲームやアニメを愛するカルチャー性と透明感ある歌声で人気を集め、デビュー以来シーンを牽引してきた。

福嶋 そうですね。私は昔から、タレントさんに必ず人生設計を聞くんですよ。「何歳までアイドルをやりたいですか?」と。「死ぬまでアイドルをしたいです」と言う子にも、子どもを産むにはリミットがあることなど、しっかり現実を伝えます。その上で、ファンの方に嘘をつくことが一番よくないと思っていて。結婚する・しないの話ではなくて、自分がどんな人生を歩みたいのかを隠さずに伝えているほうが、結果としてファンの方との信頼関係も長く続く気がします。未鈴ちゃんは、ファンに疑似恋愛を提供するというよりも、アイドルという存在そのものに夢を見てもらうことを大切にしていた印象があります。

徳井 確かに結婚願望を見せたことがなかったメンバーが人気絶頂のときに突然結婚したら、ファンは「同じ熱量で夢を追っていたわけじゃなかったんだ」と、ガッカリしますね。

福嶋 タイミングや見せ方をデザインするのはすごく大事だと思っています。恋愛に限らず、隠すことがよくない。バレたときの弁明には絶対にニンが出る。正直でありつつ、ファンの方にどんな夢を見せるかが、アイドルの腕の見せどころだと思います。たとえばきゅるして(きゅるりんってしてみて)は一見キュートなグループですが、その奥にある感情や世界観まで想像してもらえるような表現を意識しています。

平成ノブシコブシ 徳井健太 福嶋麻衣子

一番聴かれるのは「メイク中」気持ちを明るくするBGM

きゅるりんってしてみて

きゅるりんってしてみて:「カワイイ・リアリズム」の追求をコンセプトに、2021年1月にデビューした4人組アイドルグループ。 

徳井 最近人気のグループは、女性ファンがすごく多いですよね。彼女たちにどれだけ好かれるかが、長く活動できるかを左右する気がします。

福嶋 でんぱ組は男女比が4:6くらいでしたが、きゅるしては1:9です。女性ファンが多いというのは、私みたいな立場の人間には正直やりにくいんですよ。女性はごまかしがきかなくて。

徳井 ははは(笑)。

福嶋 女性ファンの比率が高いと、歌う楽曲の歌詞も変わってくるんです。応援ソングは、時代が変わっても男女ともに支持される実感がありますね。「倍倍FIGHT!」がヒットしたCANDY TUNEさんもKAWAII LAB.の中では比較的男性ファンが多い印象ですし、そういうメッセージは老若男女へ普遍的に響く気がします。以前と比べると、今の若い方々は恋愛にもフラット。昔はファッション誌が赤文字系と青文字系に分かれていて「男にモテる」vs「個性を貫く」という価値観が大事にされていたけど、今は「私が好きな私であることで、結果的に誰かに愛される」というマインドな気がします。

徳井 昔は男性も自分より格上の女性がいたら嫉妬していたけど、今は全然そうじゃないですもんね。

福嶋 そうなんです。最近の若い男性は特に、尊敬できる相手を求めているように思います。昔はぶりっ子と敬遠されていた価値観も、今はあざとくても素敵、というように変化していますもんね。だから歌詞でも「かわいい自分は最高」という姿勢を描くようになりました。ファンの意見で面白かったのが、きゅるしての曲を聴くシチュエーション。「メイク中に聴く」という回答が一番多かったんです。

徳井 へえー! 面白い。それは女性ファンならではですね。

福嶋 メイク中に聴くことで、自分もかわいくなれる気がするし、自己肯定感が上がるそうです。今の時代、若い子は常にスマホでSNSを見ているけど、メイク中は自分に集中しているんですよね。そこで気持ちを明るくするBGMとして支持してもらっているということが、興味深かったです。

平成ノブシコブシ 徳井健太 福嶋麻衣子

成熟してきたアイドル業界で10年、15年と活動し続けるために

徳井 コロナ禍を境に、アイドルにとってSNSはさらに欠かせないものになったと思いますが、もふくさんはどう考えていますか?

福嶋 フォロワー数を増やしてインフルエンサーのような地位を築くことを目標にしてほしくなくて、自分が得意なことや好きなことを常に問うようにしています。最近は好きなものがない子が増えていて、そこには時代の変化を感じますね。

徳井 なるほど。僕はSNSって、ただのブースターでしかないと思うんですよね。芸人も同じくですが、ライブでも全部本当のことを言っているわけじゃないから、SNSでは少し遊びを作ってもいいんじゃないかなと思います。

福嶋 最近はライブの撮影可能タイムも増えて、よりごまかしがきかなくなってきました。ダンスの合間で後ろを向いた瞬間などに、一番素が出てしまう。「たとえ一瞬でもお客さんにはバレるからね!」とメンバーに伝えています。

徳井 隣の人が前に出たときに一歩下がった人が印象に残ったり、ふとした瞬間にすべてが見えますよね。

福嶋 本当は芸を極めるには、15年〜20年は必要なんですよね。アイドルは1、2年でそれを求められるから、反射神経がないと向き合えなくて酷だと感じます。でも時代が変わってきて、やっと女性も10年、15年と、アイドルを長く続けられるようになってきた。業界も成熟してきたと思います。その中で淘汰されないように、自分の得意分野を磨いてほしいです。

徳井 素人目線ですが、今後のアイドル界は海外進出がカギになるのかな、と思います。誹謗中傷をしてくる人なんてごく一部だけど、SNS上だとたくさんいるように見えるじゃないですか。もっと市場が大きい海外で売れて日本に凱旋すれば、アンチなんて視界に入らなくなるだろうし、健やかに活動してほしいです。

福嶋 いいですね(笑)。私は最近、女性プロデューサーを育てることに力を入れているんです。元からいるディアステージのスタッフはもちろん、声をかけて来てもらった方もいるのですが、それぞれやりたいことが違うのがすごく面白くて。40〜50代の間はこのまま作り手の育成に注力して、80歳くらいになったら、芸人さんのプロデュースに挑戦してみたいです!

徳井 めちゃくちゃいいじゃないですか。歌やコントで全国行脚をするようなグループを、ぜひ作ってください!

平成ノブシコブシ 徳井健太プロフィール画像
平成ノブシコブシ 徳井健太

北海道出身。お笑いコンビ・平成ノブシコブシのツッコミ担当。アイドル好きとして知られ、過去にはライブイベント「徳井アイドルフェスティバル」を開催。豊富な知識と分析力でアイドル界を論じる。

福嶋麻衣子プロフィール画像
福嶋麻衣子

「もふくちゃん」の愛称で親しまれ、ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」の立ち上げを経験。でんぱ組.incやきゅるりんってしてみてなどのアイドルをはじめ、多くの楽曲を手がける音楽プロデューサー。