ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく
ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく
"かわいい"を拡張していく仕掛け人が大切にしているもの
読者モデルを経て、アイドルグループ・むすびズムのリーダーとして活動。2022年よりアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」の総合プロデューサーに就任し、FRUITS ZIPPER、CUTIE STREETなどを手がける。
違いを肯定することで多様なかわいいを表現
FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREET、MORE STAR。2020年代のアイドルシーンにおいて、ひとつのムーブメントを生み出している筆頭がKAWAII LAB.だ。代表曲、FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」やCUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」は世代を超えて広がり、ライブ会場には従来のアイドルファンだけでなく、若い世代も集まるようになった。その中心にいるのが、総合プロデューサーの木村ミサ。彼女の中で、「かわいい」はどのように作られていったのだろうか。
木村の中で「かわいい」の意味が大きく広がったと感じたのは、大学進学で上京し、原宿カルチャーに触れた頃。
「周りの子たちが本当にそれぞれ個性的なんだけど、それを全部〝かわいい〟という言葉で表現していたんです。そのときに〝かわいい〟ってこんなに広い意味を持つ言葉なのかと、自分の中で概念が一気に広がった感覚がありました」
当時から木村の中には「かわいいにはいろんな種類がある」という感覚があった。しかし、それが周囲に広く共有されるようになったのは、ここ数年のことだという。
「KAWAII LAB.として活動する中で、こういうかわいいがあっていいんだ、こんなかわいいも肯定されるんだ、という実感がかなり広がった気がします」
対話を経てそれぞれのかわいいを見つけていく
自分では見えない魅力を、誰かに見つけてもらう。木村が作ろうとしているのは、メンバー同士がお互いの魅力を発見し合い、それぞれの「かわいい」を広げていく場所でもある。そんな彼女は、自身の役割を「交通整理」と表現する。
「髪を切りたいとか、金髪にしたいとか、新しいことに挑戦したいとか、みんなそれぞれやりたいことがあるんです。その気持ち自体を否定することはほとんどありません。ただ、このタイミングは違うと思ったときは、それを伝えて話し合います。ただ〝ダメ〟と言うんじゃなくて、〝私はこう思うけど、あなたはどう思う?〟と対話するようにしています」
その丁寧なコミュニケーションは、楽曲制作にも通じている。たとえばFRUITS ZIPPERの「ふるっぱーりー!」も、そうした対話の中から生まれた一曲だった。コロナ禍に結成されたFRUITS ZIPPERは、声出し文化を十分に経験できなかった世代でもある。ライブ文化が戻り始めた頃、メンバーたちは「みんなで盛り上がれる曲が欲しい」と口にするようになった。
「実は、そのときに私も同じことを考えていて。移動車の中でみんながずっと盛り上がっているのを見ながら、その空気感がライブにも出たらいいなと思っていたんです」
木村は、楽曲を一方的に与えるものとは考えていない。
「アンケートを取ることも多いんです。エピソードを聞いたり、そのときの気持ちを聞いたりして、そこから曲のヒントを探していきます」
だからKAWAII LAB.の楽曲には、どこか本人たちの体温が宿っている。



