2026.06.23

アイドルを生み出す、“プロデューサー”新時代。女性が作る、“カワイイ”の現在地。【木村ミサさんインタビュー】

ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく

ここ数年、女性アイドルグループはまさに群雄割拠の時代を迎えている。そして、作り手である女性プロデューサーたちにも注目が集まっている。彼女たちが手がけるアイドルはなぜ共感を呼び、熱狂を生むのか。プロデューサーやウォッチャーの声を手がかりに、その現在地をひもとく

INDEX

"かわいい"を拡張していく仕掛け人が大切にしているもの

アイドルを生み出す、“プロデューサー”新の画像_1

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木村ミサプロフィール画像
木村ミサ

読者モデルを経て、アイドルグループ・むすびズムのリーダーとして活動。2022年よりアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」の総合プロデューサーに就任し、FRUITS ZIPPER、CUTIE STREETなどを手がける。

違いを肯定することで多様なかわいいを表現

FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREET、MORE STAR。2020年代のアイドルシーンにおいて、ひとつのムーブメントを生み出している筆頭がKAWAII LAB.だ。代表曲、FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」やCUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」は世代を超えて広がり、ライブ会場には従来のアイドルファンだけでなく、若い世代も集まるようになった。その中心にいるのが、総合プロデューサーの木村ミサ。彼女の中で、「かわいい」はどのように作られていったのだろうか。

木村の中で「かわいい」の意味が大きく広がったと感じたのは、大学進学で上京し、原宿カルチャーに触れた頃。
「周りの子たちが本当にそれぞれ個性的なんだけど、それを全部〝かわいい〟という言葉で表現していたんです。そのときに〝かわいい〟ってこんなに広い意味を持つ言葉なのかと、自分の中で概念が一気に広がった感覚がありました」

当時から木村の中には「かわいいにはいろんな種類がある」という感覚があった。しかし、それが周囲に広く共有されるようになったのは、ここ数年のことだという。
「KAWAII LAB.として活動する中で、こういうかわいいがあっていいんだ、こんなかわいいも肯定されるんだ、という実感がかなり広がった気がします」

FRUITS ZIPPER

FRUITS ZIPPER : 2022年に結成した7人組グループ。「原宿から世界へ」をコンセプトに、多様なカルチャーの発信地、個性の集まるファッションの街"原宿"から「NEW KAWAII」を発信していく。

その象徴が、FRUITS ZIPPERの掲げる「NEW KAWAII」。この言葉は、目の前にいたメンバーたちを見ていて自然に導き出されたものだった。
「FRUITS ZIPPERのメンバーが揃ったとき、本当に個性がバラバラだったんです。好きな曲もかぶらないし、好きなアーティストもかぶらない。それくらいみんな違っていて」

だからこそ、違いを揃えるのではなく、違いごと肯定した。その発想から「NEW KAWAII」は生まれた。興味深いのは、木村自身もまた、メンバーたちを通して新しいかわいさを学び続けていることだ。その象徴として彼女が挙げたのが、CUTIE STREETの板倉可奈。
「もともとロボットダンスなど、かっこいいダンスをずっとやってきた子だったので、〝かわいい〟に向き合うこと自体が難しいメンバーでした」

CUTIE STREETは、KAWAII LAB.の中でも特に〝ザ・かわいい〟を打ち出したグループだ。その中で板倉は、自分を変えるのではなく、自分らしさを残したままかわいさを獲得していった。
「彼女は自分の芯をブレさせなかったんです。かわいさを表現しながら、ちゃんとそこにかっこよさもまぜていて。それは板倉にしか出せないものだと思いました」

かっこいい、かわいいの二択ではない。かっこよさがあるからこそ生まれるかわいさもある。木村にとって、それは大きな発見だった。さらに印象的なのは、その変化が本人ひとりの力だけで起きたわけではなかったことだ。

「最初は、自分がそういうかわいいことをするイメージがつかなかったみたいなんです。でも、周りのメンバーから〝かなちゃんの笑顔ってすごくかわいいよね〟と言われるようになって。自分では気づいていなかったかわいさを、周りに発見してもらった感覚があったみたいです」

対話を経てそれぞれのかわいいを見つけていく

自分では見えない魅力を、誰かに見つけてもらう。木村が作ろうとしているのは、メンバー同士がお互いの魅力を発見し合い、それぞれの「かわいい」を広げていく場所でもある。そんな彼女は、自身の役割を「交通整理」と表現する。

「髪を切りたいとか、金髪にしたいとか、新しいことに挑戦したいとか、みんなそれぞれやりたいことがあるんです。その気持ち自体を否定することはほとんどありません。ただ、このタイミングは違うと思ったときは、それを伝えて話し合います。ただ〝ダメ〟と言うんじゃなくて、〝私はこう思うけど、あなたはどう思う?〟と対話するようにしています」

その丁寧なコミュニケーションは、楽曲制作にも通じている。たとえばFRUITS ZIPPERの「ふるっぱーりー!」も、そうした対話の中から生まれた一曲だった。コロナ禍に結成されたFRUITS ZIPPERは、声出し文化を十分に経験できなかった世代でもある。ライブ文化が戻り始めた頃、メンバーたちは「みんなで盛り上がれる曲が欲しい」と口にするようになった。

「実は、そのときに私も同じことを考えていて。移動車の中でみんながずっと盛り上がっているのを見ながら、その空気感がライブにも出たらいいなと思っていたんです」

木村は、楽曲を一方的に与えるものとは考えていない。
「アンケートを取ることも多いんです。エピソードを聞いたり、そのときの気持ちを聞いたりして、そこから曲のヒントを探していきます」

 だからKAWAII LAB.の楽曲には、どこか本人たちの体温が宿っている。

韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」に出演したCUTIE STREET

今年3月に韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」に出演したCUTIE STREET。「かわいいだけじゃだめですか?」の韓国語バージョンは話題を集めた

近年は海外での反響も大きくなっている。なかでもCUTIE STREETが韓国の音楽番組に出演した際の反応には手応えを感じたという。
「今までは海外展開をするときって、その国向けのアプローチを考えることが多かったと思うんです。でも今回は、『かわいいだけじゃだめですか?』をそのまま届けることができた。日本のアイドルのかわいさが、ちゃんと伝わるんだという自信になりました」

だからこそ、彼女は軸をブレさせたくないと語る。
「日本のアイドルカルチャーという軸は絶対に変えたくないんです」

何がヒットするのかわからない時代。だからこそ、自分たちが信じるものを磨き続ける。木村ミサがやっていることは、誰かがまだ気づいていない魅力を見つけ、それを本人の手に返していくことなのかもしれない。KAWAII LAB.の躍進の裏には、そんな地道な対話と発見の積み重ねがある。

CUTIE STREET 板倉可奈さん

CUTIE STREET 板倉可奈さん

アイドルらしい"かわいい"が自分の中にあるのか最初はすごく悩み、一番近くにいるメンバーを参考にしていました。メンバーやスタッフ、ファンの方から「かなちゃんの"かっこかわいい"がいい」と言われて、私は私でオリジナルの"かわいい"を信じていいと思えました。たくさんのかわいいを受け入れて愛してくださる皆さまに感謝です。