叔母、アナ・スイが教えてくれたこと

人として、クリエイターとして姉妹の道しるべに

毎年ファミリーバケーションと称して、大家族を引き連れて日本や親族の故郷タヒチに旅行したり、クリスマスや感謝祭を盛大に祝っていたアナ・スイ。仕事面では、チェイスをコレクションや化粧品のキャンペーンモデルに起用したり、ジーニーにコレクションの動画制作を依頼することも。その際、アナのクリエイティブな友人たちを紹介し、ネットワークを広げる手助けに。

Chase Sui Wonders(チェイス・スイ・ワンダーズ)、Jeannie Sui Wonders(ジーニー・スイ・ワンダーズ)
イーストヴィレッジのレストラン、ジョーンズで。チェイスはカジュアルなサンデー スクールのニットにパンツ。ジーニーは、サンディ リアンのテーラードジャケットにスクールガール風のプリーツスカートを合わせ、プレッピーに

自身の子どもがいないアナにとって姉妹は娘同然。「可愛くてしょうがないのよ。彼女たちの力になるのは当然」と、以前アナは語っていた。ともにハーバード大学出身ということもあり「二人とも頭がよくて、すごく才能があるのよ」と目を細めながら。 

偉大な叔母を持つ二人に、影響を受けたことを尋ねると、「〝To live your life(自分らしく、生きなさい)〟という言葉かな」とチェイス。アナ・スイのモットーを、大人になってから事あるごとに思い出すという。一方、ジーニーには、アナから中学生の頃にプレゼントされたお守りのようなバッグがある。アナの親友、マーク・ジェイコブスのもので、ジーニーにとっては人生初の〝大人〟のバッグ。手にしたとき「大人の仲間入りをして、身が引き締まる」と思ったそう。そして、十数年たった今でも大切に使っている。

アナスイとChase Sui Wonders(チェイス・スイ・ワンダーズ)
ソーホーにあるアナ・スイの店で幼い頃のチェイスとアナ

幼い頃からアナのショーに行き、バックステージに潜り込んで遊び場のように駆け巡り、ナオミ・キャンベルやリンダ・エヴァンジェリスタなど、名だたるスーパーモデルたちや大御所メイクアップ・アーティストのパット・マグラスらに可愛がられていた二人。

ナオミ・キャンベル、Chase Sui Wonders(チェイス・スイ・ワンダーズ)、Jeannie Sui Wonders(ジーニー・スイ・ワンダーズ)
アナ・スイのショーのバックステージでナオミ・キャンベルに可愛がられる姉妹。「こんなすごい写真が残っているのに、記憶がないの」とチェイス

「バックステージで遊ぶことが楽しくて、アナの服が放つ強烈な世界観には興味も関心もなかった」というジーニーが叔母のクリエイターとしてのすごさを知ったのは中学生の頃。パンクとパイレーツを融合させたニューロマンティックをテーマにした2007年の春夏コレクションだ。

「ショーの幕が開いた瞬間から目が舞台に釘づけになってアナの創造性のすごさに圧倒されたことは今でも覚えてる。ヴィンテージとロックの世界を織り込んでフェミニンかつガーリーでありながら、ニューヨークのアンダーグラウンドのサブカルチャーの鈍い光を放つ独自の世界と美学を作り出す姿勢。参考にするだけではなく、学ばなければならないわ」

叔母、アナ・スイが教えてくれたことの画像_4
バックステージで遊び回っていた頃。メイクアップ・アーティストのパット・マグラス(右)とアナ(中)、ナオミ(左)に囲まれているチェイス

2019年からアナのコレクション・ムービーを任されているジーニーは、仕事をするたびに彼女から独自の創造的視点を世界に向けて発信する方法を学んでいる。 

姉妹をソフィア・コッポラに紹介したのもアナだ。思えばアナは、出会った友人たちを大切にしてきた。長年のつき合いで築き上げた仲間だからこそ、互いに成長したり助け合ったりできることを知っているから。彼女の友人たちを惜しげもなく紹介するのは、姉妹のこれからの人生でもキャリアでも、仲間の大切さを伝えたいからなのかもしれない。

マーク ジェイコブスのバッグ
叔母からプレゼントされたマーク ジェイコブスのバッグは、ジーニーの宝物で、ティーンの頃から愛用している

本企画を校了する間際、アナからメッセージが届いた。
「急速に進化するAIの時代でも、ブレることのない自分を持っているし、未来だけではなく過去にも興味を持ち、大切にしていることは彼女たちの素晴らしい部分だと思う。可能性は無限大だと信じているわ」

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