2026年5月17日(日)まで、京都市内各所で「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2026」(以下、KYOTOGRAPHIE)が開催中だ。ロンシャンは、メインプログラムのひとつであるタンディウェ・ムリウ〈Camo〉への協賛を通じ、KYOTOGRAPHIEに初参加。オープニングに合わせて来日したムリウと、ロンシャン クリエイティブ・ディレクターのソフィ・ドゥラフォンテーヌに、今回の展示にかける思いを聞いた。

ロンシャンが「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2026」に初参加。タンディウェ・ムリウ〈Camo〉が映し出す女性像の再定義

2026年5月17日(日)まで、京都市内各所で「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2026」(以下、KYOTOGRAPHIE)が開催中だ。ロンシャンは、メインプログラムのひとつであるタンディウェ・ムリウ〈Camo〉への協賛を通じ、KYOTOGRAPHIEに初参加。オープニングに合わせて来日したムリウと、ロンシャン クリエイティブ・ディレクターのソフィ・ドゥラフォンテーヌに、今回の展示にかける思いを聞いた。

INDEX

歴史的空間に響く、タンディウェ・ムリウ〈Camo〉の世界

KYOTOGRAPHIEにて開催中のタンディウェ・ムリウ〈Camo〉展示風景

展示の舞台に選ばれたのは、京都・室町の老舗帯匠「誉田屋源兵衛」の竹院の間。ケニア人女性アーティスト、タンディウェ・ムリウの代表シリーズ〈Camo〉が、歴史ある静謐な空間に鮮烈に展開される。アフリカのテキスタイルをキャンバスに見立てたビジュアルは、見る者を圧倒する力強さに満ちている。

〈Camo〉は、被写体が背景に溶け込みながらも、同時に「自らを写し返すキャンバス」として立ち上がるシリーズだ。男性優位の社会構造が根強いケニアで育ったムリウが、女性の役割やアイデンティティへの問いと向き合う過程で生まれたのだという。

ワックス・プリントというアフリカの伝統的なテキスタイルとテイラーがそのテキスタイルから仕立てた洋服、アーカイブに着想を得た髪型、日用品を素材にしたアイウェア、そして各写真に添えられたアフリカのことわざ。視覚と言葉が重なり合い、世代を超えて受け継がれてきた文化の記憶を呼び起こしていく。

ロンシャンとタンディウェ・ムリウ、創作をめぐる対話とその先にあるもの

タンディウェ・ムリウとロンシャンのクリエイティブディレクター、ソフィ・ドゥラフォンテーヌ

左から、タンディウェ・ムリウ、ソフィ・ドゥラフォンテーヌ

両者の関係は、ロンシャン創業家のキャスグラン兄妹がムリウの作品に出合い、収集を始めたことから始まった。現在、彼女の作品はロンシャンの店舗を彩り、2025年のグリーティングとなるアート制作も手がけるなど、その絆はコレクターとアーティストの枠を超え、継続的かつ親密なものへと深まっている。

女性のエンパワメントとヘリテージの継承に宿るオーセンティシティ、そしてそこから生まれるエナジーをテーマに掲げるメゾンの姿勢と、ムリウが作品を通して問い続けるアイデンティティへの眼差しは、深く共鳴し合っている。

タンディウェ・ムリウに聞く、ありのままの自分を受け入れること

KYOTOGRAPHIEにて開催中のタンディウェ・ムリウ〈Camo〉展示風景

──写真家として活動を始めるまで、ケニアでどのように表現を学ばれたのでしょうか?

私が女性のエンパワメントを語る物語は、写真家になった瞬間ではなく、実はそれよりずっと前から始まっていました。

私の両親は少し型破りでした。非常に家父長的なケニア社会において、息子を持たず娘だけの家庭を築きましたが、両親は私たちを「女性」として見る前に、まず一人の「人間」として接し、自立できるよう力を注いでくれたのです。このバックグラウンドは私にとって極めて重要です。父は、私たちが自立するためにテクノロジーに親しむことを望み、その一つが写真でした。私が写真に魅了されていると知ると、父は写真雑誌を買い与えてくれました。そうして学びを深めていったのです。

大学ではビジネスを専攻していたので、卒業後に医師や弁護士といった「社会的に認められた職業」に就くべきか葛藤しました。そんな時、父がこう言ってくれたのです。「タンディウェ、君は写真が好きなんだろう。それなら、その道に進みなさい」と。自分らしくある勇気を与えてくれた父の言葉こそが、私の原点です。彼は、好奇心を持ち周囲を見渡すことを教えてくれました。どんな些細なことにも、インスピレーションが宿っているからです。

The Space Between Love and Comfort, 2025 © Thandiwe Muriu, Courtesy 193 Gallery

The Space Between Love and Comfort, 2025
© Thandiwe Muriu, Courtesy 193 Gallery

──鮮やかなセットに負けないモデルたちの力強い存在感は、どのように引き出しているのですか?

演出はすべて私が行っています。私の作品において「女性であること」は揺るぎないテーマです。これは、男性優位の広告写真の世界で型にはまらずに働いてきた私自身の経験、そして「社会の求める姿と異なる選択をしたとき、私は一体誰なのか」という問いから生まれたものです。

私自身も含む多くの女性たちは、静かに、目立たず、控えめに居場所を確保すべきだというプレッシャーを抱えてきました。私のポートレートを通じて、女性たちが「ありのままの自分を堂々と受け入れ、自分の居場所を確保する」勇気を持ってほしい。撮影でのポーズもその一環であり、周囲が無視できないほどの圧倒的な存在感を放てるよう導いています。

ソフィ・ドゥラフォンテーヌに聞く、ロンシャンがアートや社会にコミットする理由

KYOTOGRAPHIEにて開催中のタンディウェ・ムリウ〈Camo〉展示風景

──タンディウェさんとの出会い、そしてソフィさんが考える彼女の作品の魅力についてお聞かせください。

4、5年前、パリの展示会で彼女の作品に出合ったのが始まりです。私はクリエイティブ・ディレクターとして日々写真に接していますが、実は「アートとしての写真」に惹かれることは稀でした。ですが、彼女の写真には一瞬で惹き込まれてしまった。作品の前から離れられなくなり、中に入ってみたいと思ったほど。タンディウェの作品、そして彼女自身についてもっと知りたくなったのです。

彼女は、女性のエンパワメントに真摯かつ前向きに取り組む素晴らしい女性です。その姿勢はロンシャンの理念とも深く共鳴しています。彼女が表現しようとする「女性の内面の美しさ」は、私がコレクションを通じて実践していることそのもの。ファッションはまず何よりも自分自身のためにあるべきで、女性たちが自信を持って過ごせるように、という私たちの想いは共通しています。

また、彼女の色彩感覚や、地域のコミュニティや職人技を取り入れる姿勢も、ロンシャンが大切にしている価値観です。今回の展覧会で彼女をサポートし、日本のみなさんに作品を届けられることを心から嬉しく思います。

KYOTOGRAPHIEにて開催中のタンディウェ・ムリウ〈Camo〉で展示されている、櫛でできたアイウェア

作品でモデルたちがアイウェアとして身につけているのは、生活の中にあるさまざまな日用品がモチーフになったもの。会場では実際のアイウェアも展示された。

──B Corp™認証を取得された今、再び彼女をサポートする意義をどう捉えていますか?

ロンシャンにとって、B Corpは素晴らしい「手段」だと思います。私たちは人々の健康や社会、環境といったテーマに関して多くの取り組みを進めていますが、B Corpによってそれらが正しい方法で進んでいるかを厳格に検証することができる。私たちは単に活動の正当性を主張するのではなく、目指す目標に対して本当に効果的であるかどうかを確かめたいのです。

また、ロンシャンのCSRにおいて、社会支援、特に女性の存在は不可欠です。従業員の約90%が女性であり、私自身も女性たちのために働いているからです。同時に、アートへの継続的なコミットメントも重要視しています。創造性こそが未来の鍵であり、次代を担う才能を支援しなければなりません。タンディウェのように国際的に活躍するアーティストはもちろん、ANDAMの審査員を務めたり、候補者たちに余剰生地やレザーを無償で提供して独自のコレクション制作をサポートするなど、若手デザイナーへの支援も実践しています。創造性は私たちを一歩前進させ、未来を見据えるきっかけをくれるのですから。

KYOTOGRAPHIEにて開催中のタンディウェ・ムリウ〈Camo〉展示風景

今年のKYOTOGRAPHIEのテーマは「EDGE(エッジ)」。パリの姉妹都市である京都で、ロンシャンのアートへの取り組みに新たな一章が刻まれた。今回の展示では、アフリカン・レジデンシー・プログラムで共同制作された新シリーズ〈More Than Half〉も発表されている。〈Camo〉と併せて鑑賞することで、その重層的な世界観をより深く味わえるはずだ。

なお、開催期間中はフラッグシップストア「ロンシャン ラ メゾン表参道」でもムリウの作品を特別展示中。京都と東京、二つの場所で交差する彼女の情熱をぜひ体感してほしい。

〈Camo〉 Presented by LONGCHAMP
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2026」のメインプログラムのひとつ、タンディウェ・ムリウ〈Camo〉のエントランス

期間:〜2026年5月17日(日)
時間:10:00~18:00(無休、入場は閉館の30分前まで)
場所:誉田屋源兵衛 竹院の間(京都府京都市中京区室町通三条下ル烏帽子屋町489)
チケット詳細:KYOTOGRAPHIE公式ホームページにて