#2 Noir Kei Ninomiyaのピンクの研究

ブランド名と相反する色にあふれた今季。その意図を探るため、二宮啓に直撃した!

チュールドレスに無数のワイヤーを配し、先端にクリスタルビーズを施した。反射する光によって、煌めくオーラをまとう。モデルはランウェイでもこのルックを担当したHANAKA。

ドレス¥920,000、ブーツ¥15,000/コム デ ギャルソン(ノワール ケイ ニノミヤ)

PROFILE

二宮 啓●1984年生まれ。青山学院大学フランス文学科を卒業後、アントワープ王立芸術学院へ。2008年にコム デ ギャルソンに入社。パタンナーを経て、2012年にノワール ケイ ニノミヤを始動。モヒカンヘアがトレードマーク。

ファッションエディターの仕事は、デザイナーのメッセージを翻訳し、より多くの読者に届けることだと思っている。しかし、メッセージそのものがわからなくなってしまった。そんな暗中模索の日々に、突然ピンクの稲妻が走り、心を撃ち抜かれた。去る10月に、東京で発表されたノワール ケイ ニノミヤのショーが脳裏から離れない。ブランドを象徴する黒のボールビーズで形成したドレスから始まり、次第にリボンやチュールやクリスタルで表現した淡いピンクが黒を凌駕していくコレクション。意表を突くアイデアに、しばらく動悸が止まらなかった。

「ノワールでは常に新しいもの、ブランドイメージを超えたものを作りたいと思っています。今季は少し明るく前向きなものにしたいと、パンクのような、ビビッドな強いピンクではなく、ノワールの世界観からはずれるようなトーンのピンクをキーカラーに選びました」とデザイナーの二宮啓。

特別に撮り下ろしたルックは、フィナーレを飾ったクリスタルのチュールドレスだ。光の反射で、まるでシャンデリアのように夢見心地の世界へと誘う。そうだ、ファッションにはこんな幻想的なパワーがあるのだと、久しぶりに全身が震えた。

そのエネルギー源は、作り手の信念にあった。かつてないほど制限のある制作過程において、二宮には決してブレないものがある。

「苦労も含めて、作り手であるわれわれが面白みを感じながら取り組んだものじゃないと、人は絶対に感動しない。だからこそ、伝わるものがあると信じています。今回はすでにあるものを使って、知恵を働かせながら新しいものを生み出すことを意識しました。外部との接点が少ない状況の中での作業で、よりそれが凝縮されています。もの作り、手仕事、人が何かを作ることの魅力やエネルギー。それらを発信し続けることが、未来を見たときに、必要になってくるのではないかと思います。そうしたものが持続し、社会の中に必ず根づいているということが大事だと思う」

最後に二宮は「ファッションから元気をもらって生きていこうとする人々に、少しでも訴えることができれば意味のある仕事だ」と語る。ファッションが救いになり、一歩を踏み出す勇気になりうるように。作り手の思いにさらなる熱量を加え、拡張させていく。それがSPURの使命だと、再び心を燃やしている。

エディター KINUGASA

衣笠なゆた●顔面認識能力には自信があるモデルウォッチャー。2019年にはHANAKAのパリコレデビューを追いかけた。

photography: MARSA styling: Fusae Hamada hair: Mr.Tomik make-up: NOBUKO MAEKAWA〈Perle〉 model: HANAKA

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