この夏のヴァカンス、お勧めのデスティネーションはカプリ島。この島に今行くべき理由がここに。
この夏のヴァカンス、お勧めのデスティネーションはカプリ島。この島に今行くべき理由がここに。
リゾートファッションで栄えたカプリ島に、新しい隠れ家が
イタリアのカプリ島は、ファッションとの関わりが深い。1948年には、ドイツ人デザイナーのソニア・デ・レナートが、この島に着想を得たクロップドパンツを「カプリパンツ」と命名。やがてオードリー・ヘップバーンをはじめ、当時のアイコン女優たちが“カプリ”をまとうようになった。同じ頃、リゾート地を訪れるジェットセッターのための服で頭角を現したのが、エミリオ・プッチだ。彼が1950年に初のブティックを開いたのは、ほかでもないカプリ。プッチの新アーティスティック・ディレクター、カミーユ・ミッチェリが2022年、初コレクション発表のロケーションにこの島を選んだのには、そんな歴史があった。
たまたまテレビで流れていた映画『軽蔑』(ブリジット・バルドー主演、ジャンリュック・ゴダール監督、1963年)のシーンを目にしてカプリを思い出していた今年の初夏のこと。島の中心地に新しいプチホテルがオープンするというニュースを耳にした。ヴィラ・ヘリオス(Villa Helios)という名のホテルは、カプリで代々ホスピタリティに携わるファミリーとして知られるデ・アンジェリス家の、新しいアドレスだ。ディレクションを任されたのは一族の中でも最も若手にあたる、サルヴァトーレ・パルンボ。生粋のカプリっ子ながらスイスでホテルビジネスを学び、ロンドンやパリで経験を積んだ後、Uターンしたばかりだ。JKプレイスやミネルヴァといった、デ・アンジェリスによるアイコニックなホテル同様‟5つ星”ながら、9部屋のみでインティメイトな雰囲気だと聞く。このコントラストに興味を掻き立てられ、すぐに予約をして荷物をまとめた。ワードローブには、ヴィンテージのプッチのシャツも忘れずに。
まずはパリからナポリに飛び、空港から車で港へ。そして高速フェリーで、約1時間。マリナ・グランデ港からフニコラーレで数分登ると、カプリのヘソ、ピアツェッタに着く。そして、立ち並ぶブティックやレストランを横目に数分歩くと、それまでの喧騒が嘘のように静まり、時が止まったかのような空気の中、一軒の館が現れる。19世紀末に、バルバラ・メタ・フォン・サリス=マルシュリンス男爵夫人のために建てられた邸宅の元来の姿をいかしつつ、改装を終えたばかりのヴィラ・ヘリオスだ。外観も、庭に咲き乱れる花々も、カプリを象徴するブルーと白。デコレーター、クラウディオ・ガルティによる内装は、クラシックな地中海スタイルをベースに、北アフリカのモレスク様式のタイルがアクセントだ。バーエリアや各客室には、アーティザナルな籐やスチール、セラミックの家具、手描きで色づけされたマヨリカ焼きの陶器、アンティークのオブジェ、大胆な色使いのフラワープリントのファブリックがミックスされ、ローカルでちょっとレトロな魅力に溢れている。特に魚や植物を模ったセラミックのランプは、なんとも愛らしい。客室には、オーダーメイドの香りのネとして知られるラウラ・ボゼッティ・トナートによる、フレッシュなオリジナルのルームフレグランスも用意されている。上階の部屋では、テラスから紺青の海と崖に立ち並ぶ家々が織りなす、まるで絵葉書のような景色が一望できる。一方階段周りは曲線を駆使した、アールヌーヴォー・タッチで。スタッフたちは実にフレンドリーで、ホテルというより友人宅に迎えられたような印象を与えてくれる。サルヴァトーレの「ヴィラ・ヘリオスはホテルと言うよりホームです」という言葉にも、うなづける。
またここの隠れた特典は、やや奥まったところにあるプールに午後から夕方にかけて陽が差し込み、水温が夜まで暖かいこと。だから今や世界有数の観光地となった島の中心地にありながら、ヴィラ・ヘリオスでは自然に囲まれた静かな環境を享受し、古きよき時代のカプリの魅力を味わえるのだ。
青と白で統一された、ヴィラ・ヘリオスの外観と庭。Photo: © Stefano Scatà.
グラウンドフロアの客室のテラス。ヴィラ・ヘリオスではイエローもアクセントカラー。 Photo: © Villa Helios
ポップな作りの、プールエリア。© Stefano Scatà
ヴィラ・ヘリオスでは、至る所に地元のクラフツマンシップが生かされたランプが。Photo: Minako Norimatsu
クラシックな中にもフォルムや色使いが楽しいインテリア。Photo: © Stefano Scatà
テラスからは、緑あふれる島と紺青の海が見渡せる。© Stefano Scatà
客室も、それぞれのテラスは違った雰囲気。© Stefano Scatà
カプリ島とその周辺で、見るべきもの
フード面でも、今回はデ・アンジェリス・ファミリーのホスピタリティを堪能することにした。まずはヴィラ・ヘリオスの庭に設えられたレストラン、イル・ジャルディーノ(Il Giardino)。若手シェフ、アレッシオ・アンブロージオは地元の、そして旬の素材に人一倍こだわり、一部の野菜はヴィラ・ヘリオスの菜園で採れたもの。料理はオーセンティックでシンプルながら繊細なテイストで、盛りつけも洗練されている。次は少し方向性を変え、サルヴァトーレの兄が経営するピッツェリア、ヴィッコ(Vico)をトライ。ここでは、伝統的なナポリ風ピザをガストロノミーの感性で再解釈した、ほかにはない創作ピザが味わえる。トリュフやマグロなど高級食材を大胆に組み合わせたり、エスプーマやカルパッチョ、生ハムなどを焼き上がり後にトッピングして食感と香りを引き立てたり。いずれもイル・ジャルディーノ同様、地元らしさ重視だが、多彩な素材を微妙な匙加減でミックスさせるには、背後にモダンな技術があると言う。ボタニカルとワインをベースにつくられるクラフト・リキュール、コレッティーヴォ・ボタニコ(Collettivo Botanico)をベースにしたローマの人気バー、サロット42(Salotto 42)と共同開発されたシグネチャーカクテルも、マスト。ピザとカクテルとのペアリングで楽しめば、一段とユニークな体験となる。
一方カプリのランドマークで見逃せないのは、先に触れた映画『軽蔑』のロケ地、ヴィラ・マラパルテ。崖の上で、まるで天に向かうように伸びる階段で有名だ。ただしヴィラは個人宅なので、見学は不可。門から眺めるか、ボート遊覧の際に海から眺めるだけでも、その壮大さは十分に味わえる。
長年の夢を叶えて2年前にここでショーを開いたのは、ジャックムス。La Casaと題したこのコレクションをきっかけに、プッチやエレスが並ぶカメレッレ通り(Via delle Camerelle)には同ブランドのブティックがオープンし、カプリ島のファッション指数が高まった。ショッピングスポットを挙げ出したらキリがないが、一つだけ地元ブランドを選ぶとしたら、アウトリ・カプレージ(Autori Capresi)。上質なリネンを使ったクラシックながらコンテンポラリーなデザインは、ありそうでなかったものばかり。創業者の孫が昔ながらの手作りを続けるアトリエは、カプリ中心地から少し外れ、観光スポットより住宅を主とする街、アナカプリにある。コットンのナイトウエアも往年のデザインがチャーミングだ。またサルヴァトーレが教えてくれた、1948年創業のフレグランスショップ、カルトゥジア・イ・プロフーミ・ディ・カプリ(Carthusia I Profumi di Capri)も、カプリの歴史を物語る場所だ。すぐ近くには歴史的なアウグストゥスの庭園があり、地中海の花や果物の香りがそのままボトルに詰まった情景が目に浮かぶ。
カプリから足を伸ばしてボートでのデイトリップをするなら、ポジターノへ。イタリア本土のアマルフィ海岸でもひときわ風光明媚でリュクスな街だ。映画さながらのドラマティックな体験をしてみたいなら、ホテル、ヴィラ・トレヴィッレ(Villa Treville)のレストランMaestro’sにランチの予約をしつつ、カプリからボートをハイヤーし、ホテル専用の桟橋に乗りつける。そしてランチ後に正面口から出て、街へ。または高速フェリーでポジターノの玄関口、スピアッジャ・グランデに降り立ち、自由に街を散策。いずれにしても、カプリ島からポジターノに近づくと、まるで山肌を覆うようにヴィラやホテルが立ち並ぶ光景を目の当たりにでき、感動的だ。
さらにカプリからの帰途では、ナポリで2、3泊して観光するのもいい。ナポリでは世界屈指の国立考古学博物館、王宮や大聖堂といった要所はもちろん、現代アートのギャラリーThomas DaneやGalleria Fonti、オーダーメードのシャツ店Camiceria Piccolo Napoli、珊瑚美術館など見どころが盛りだくさん。鄙びた魅力の旧市街はぶらつくだけでも楽しい。さらにナポリ中心地からローカル電車で1時間ほどのポンペイの遺跡も、一生に一度は訪ねたい場所のひとつ。ヴィラ・ヘリオスを拠点としたカプリ島への旅は、こんなに多くの可能性を秘めているのだ。
ヴィラ・ヘリオスの館の手前の庭に面した、イル・ジャルディーノ。Photo: © Villa Helios
トマトはこの地方の名産。濃厚な甘みと程よい酸味、そして水分が少なくて身がしっかり詰まっているのが特徴だ。バジリコはホテルの菜園から。Photo: © Villa Helios
自然のモチーフをあしらった、イル・ジャルディーノのテーブルセッティング。© Villa Helios
創作ピザのヴィッコ。Photo: Minako Norimatsu
ヴィッコのシグネチャーは、コレッティーヴォ・ボタニコのリキュールを使ったカクテル。 Photo: Minako Norimatsu
ヴィッコのウリ、生ハムとヘーゼルナッツ、黒トリュフとバジリコのピザ。Photo: Minako Norimatsu
アウトリ・カプレージはヴィラ・ヘリオスと同じ通りに。Photo: Minako Norimatsu
カプリ修道院の14世紀の修道士にまつわる香りの伝説をルーツとし、1948年に創業したカルトゥジア・イ・プロフーミ・ディ・カプリ。Photo: Minako Norimatsu
ヴィラ・ヘリオスの客室で自由に見られるブックキュレーションでは、ポンペイの遺跡に関する本も提案。ここでお勉強してからナポリ経由でポンペイに行くのもいい。Photo: Minako Norimatsu
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/