勝手にノルマンディー、勝手に最終回。クリスチャン・ディオールの生家を訪ねて

ノルマンディーに行くなら絶対に訪ねようと思っていたところがありました。クリスチャン・ディオールの生家Musée Christian Dior。

グランヴィルの瀟洒な住宅街を抜けた丘にあるピンクの館。館内ではこの日ちょうど「Treasures of the collection」と題した企画展が開催されていました。これが、Musée Christian Dior渾身のコレクション大公開! といった内容。60ものオートクチュールのドレス、ムッシュがこれがなければレディ失格と位置付けた帽子や手袋、ご本人の所持物(腕時計はジャガー・ルクルト!)などがコンパクトなミュージアムのなかにぎっしり。

かの有名な星のお守り! 道で拾ったというから小さいかと思いきや結構デカいです。

生「バー」スーツに感激!

小物も完璧にせよ、とムッシュ。

ウエストをガンガン削られたストックマンのカスタムにムッシュの美への厳しさをひしひしと感じ……

スニーカーでパーティに行っちゃうような現代からすると、完璧なエレガンスの世界は夢のように思えました。

館を出て庭を回ると、ジュエリー「ローズ デ ヴァン」でもおなじみの風配図も。丘の上ということもあり心地よく通る海風を感じながら幼少時代を過ごしたのでしょうか。敷地自体は今、公園として開放されているということもあり、地元の方にも愛されているようで、軽やかに通り抜けたり、ワンちゃんを散歩させている人も(犬は禁止されていますが……)。決して見せつける感じではなく、慎まやかかつ美しく咲く花々は、ムッシュの愛したお母さまの庭園を彷彿させます。とにかく「気」のよさを感じるこの地で、迷信深いクリスチャン少年は守られるように育ったのでしょうね。

落ちている栗にさえ詩的な美しさが……。

ちなみに道中、かのノルマンディー上陸作戦で知られるオマハ・ビーチに立ち寄りました。(クリスチャン・ディオールは父の破産などの事情もあり、このときにはグランヴィルにいなかったようなのですが……。)激戦があった地はいまやローマ帝国の遺跡のごとく、雑草がところどころ生え、一見平穏。ですがボコボコと空いたクレーターのような穴や、鉄骨が飛び出たトーチカに戦慄をおぼえます。トーチカの中には海のかなたを監視できるのぞき穴が。その前に立つと、上陸を前に対峙する両軍の緊張感が伝わってくるようでした。

ディオールの館と、オマハ・ビーチと。対照的なふたつを通して、第二次世界大戦後の世界で、ムッシュの服がいかに喜びをもって受け入れられたかが肌で理解できます。お時間がある方は、オマハ・ビーチもぜひお立ち寄りください。

ちなみにMusée Christian Diorはホームページに「移動手段がない人にはキツイですよ」といった趣旨の記述があります。車がないとアクセスが難しいかもしれません(ちなみに私は滞在していたHonfleurから3時間のドライブでした)。また、時期によってはお昼の時間帯は閉館しているので公式HPで事前にご確認を! はるばるやってきて閉まってたら悲しいですからね。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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