自分に優しくする日のお供に

今年ももうすぐ終わりますね。仕事を納めた方も、まだまだ働きますという方も、お疲れ様でした。年末年始は1年間の疲れを十分に取り去るために、いつもたっぷりの睡眠と無理のないインプットを心がけて過ごしています。1年間の間にちょっと傷ついている心を癒してくれるような本をめくったり、低刺激な映画を観たりしながら過ごします。今年のお供はこちら。

東野翠れんさんによる写真集「花、音、光」


翠れんさんには、SPUR2022年1月号のほんものシェアというテーマで、お母様と一緒にシュプールに出演いただきました。その時お会いして感じたのは、翠れんさんの内側から滲み出てくる優しい透明感。スピリチュアルな意味ではなく、魂が綺麗な人ってこういう人のことをいうんだろうなと思ったんです。同じ場所にいるだけで心が洗われるような特別な時間でした。そんな翠れんさんが撮る写真、それはもうピュアで、光がやさしくて、写っている花の色は本物で、みずみずしくて……。やっぱり写真は嘘をつけないから、撮るひとの内面がどうしたって出てしまうものだと思うんです。そういう意味でこの写真集はすごく柔らかく、穏やかな空気をまとっています。だから1ページ1ページ、なるべくじっくりゆっくりと眺めたい。そんな気持ちになります。
今は映画を1・5倍速で観る人が増えたり、TikTokでは最初の1秒で面白いか否かが決められてスワイプされたり、音楽も最初の数秒でフックを持ってこないと売れない、などと言われている世の中。もちろんそれも時代の流れなので否定しないですし、私もそのスピードの恩恵を受けて過ごしています。しかしこんなふうに写真集をゆっくりと心ゆくまで時間をかけて堪能し、次のページにようやく辿り着くということが、究極のセラピーになると思うのです。

昔読書家の父に、どうやったら本を速くたくさん読めるのかと尋ねた時に、「何も速く読むことがいいことではない。同じ本をゆっくり何度も読むことだって価値があることだ」と言われたことがあります。その時に、ちょっとだけ気持ちが楽になったのを覚えています。これを読んでいる人の中には、このまとまった連休にいかに多くのコンテンツを摂取しようかと意気込むものの、その膨大な情報量に思いをめぐらせるだけで疲れてしまうという人もいるかもしれません。そんな時は、お気に入りの写真集を1冊手に入れて、できる限り何も考えずにぼーっとしながらページを繰るという過ごし方も良いかもしれません。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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