「一見、つかみどころのない女性に惹かれます。その奥に秘めた部分を解き明かしてみたくなる」とスタイリスト浜田英枝さん。グレーは、黒と白の間にある無限の色彩。名付けようのない色だから、まとう人自身の内面がひとりでに透けて、湿度のようなものが匂い立つ。4人の女性が着たグレーは、彼女たちの深奥にある謎と本質を映し出す。

2026.09.09

2026秋冬のトレンドカラーはグレー。曖昧さに宿るセンシュアリティ

 「一見、つかみどころのない女性に惹かれます。その奥に秘めた部分を解き明かしてみたくなる」とスタイリスト浜田英枝さん。グレーは、黒と白の間にある無限の色彩。名付けようのない色だから、まとう人自身の内面がひとりでに透けて、湿度のようなものが匂い立つ。4人の女性が着たグレーは、彼女たちの深奥にある謎と本質を映し出す。

グッチのグレーコーディネート

コート¥484,000・ニット¥291,500・パンツ¥368,500・ピアス¥79,200・靴¥181,500・リング(参考商品)/グッチ クライアントサービス(グッチ) アイウェア¥77,000/ケリング アイウエア ジャパン カスタマーサービス(グッチ)

グレー、謎めく色の奥に隠されているものは

ビッグシルエットのコートはデムナによる初のランウェイに登場したルック、この色からしてすでに「グレーだ」とははっきり言い切れないのだ。植物のようにも鉱物のようにも見える、アーシーなGRAVEL=砂利の色。捉えどころのない薄闇のような色のロングコートに身を包んで、いつの時代、どこの街ともわからない、正体不明の存在になる。

ディオールのグレーコーディネート

ジャケット¥970,000(参考価格)・シャツ¥270,000(参考価格)・スカート¥10,000,000(参考価格)・ピアス¥74,000・靴¥180,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

夢のような服だけれどうつつになるかもしれない

優雅なトレーンを引くティアードスカートは、チュールレースのひとつひとつに銀色のスカラップ刺しゅうが施されている。ニット素材で再解釈した「バー」ジャケットには、グリーンのスパンコールが瞬く。ロマンティックの極みといえるのに、グレーの色は、黒よりも白よりもリアルに感じられる。夢のようなルックに袖を通してみたいと、心を動かす。

プラダのグレーコーディネート

トップス¥144,100・インナートップス¥125,400・パンツ¥231,000・インナーパンツ¥224,500・ソックス¥181,500・靴¥231,000(すべて予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ)

重ねるほどに本質が透けて見えるかもしれない

プラダのランウェイでは、ジャケット、シャツ、ドレスの3つのレイヤードを段階的にはずしたあと、このグレーのルックが現れた。ほつれたようなシアートップスとウールのタンクトップ、インナーパンツに重ねたスポーティなショーツ、刺しゅうのソックス……、自由なアイテムは、重ねるほどヌーディに、着る人そのものを映し出す。

ジル サンダーのグレーコーディネート

ジャケット¥536,800・シャツ¥385,000・パンツ¥294,800・ピアス¥140,800/ジルサンダージャパン(ジル サンダー)

アンビバレンスが溶け合う色かもしれない

静と動の二面性を同時にあらわにした、シモーネ・ベロッティによる今季のジル サンダー。端正なテーラードジャケットの袖口からは幾重もの生地があふれ出す。パンツはサイドのドレープが、直線的なシルエットにやわらかな曲線を添える。奥行きのあるチャコールグレーとプレーンな白のモノトーンの中に、禁欲と官能というアンビバレンスもまた、溶け合ってゆく。

エムエム6 メゾン マルジェラのグレーコーディネート

ジャージミニドレス¥140,800・スカート¥140,800・ピアス¥63,800・靴¥122,100/マルジェラ Wャパン Nライアントサービス(エムエム6 メゾン マルジェラ) ベルト/スタイリスト私物

ひとくくりになんてできないかもしれない

グレーとネイビーはユニフォームを連想させる色。スポーティなロゴもガーリーなフリルも、しっくりとまとまる。しかし制服というルールと反骨はいつも隣り合わせ。"地味な色"の画一性からは、確かな意志と、埋没しない個性がまぶしくほころぶようだ。

ジュリー ケーゲルスのグレーコーディネート

ドレス¥254,100・イヤリング¥63,100・靴¥136,400/ノースリバティー(ジュリー ケーゲルス) タイツ/スタイリスト私物

捉えどころのない影のようなものかもしれない

薄明の中にたゆたう影のようなプリーツドレス。ショルダーの膨らみは、繊細なストラップでつなげられてどこか不安定。そして、ガラスの破片のようなイヤリングと足もとを縁取るジグザグ。儚く頼りなげなのに、確かな実在性がある、新鋭ジュリー・ケーゲルスの感性を通したグレーの重なり。

バレンシアガのグレーコーディネート

ジャケット¥555,500・ピアス¥116,600/バレンシアガ クライアントサービス(バレンシアガ)

光と闇のあわいに匂い立つものかもしれない

限りなく暗闇に近いグレーのジャケットの、深く開いた襟もとから仄白く浮かび上がるデコルテ。重厚でマニッシュなテーラリングの、立体的なネックラインは、女性の着物姿のような"抜け"を生む。細い肩、しなやかな頸、湿度をもつ肌、あからさまなセクシャリティではなく、陰影の中に気配だけを匂わせるセンシュアリティが人を惹きつける。

アライアのグレーコーディネート

トップス¥194,700・スカート¥569,800・靴¥207,900・グローブ(参考商品)/リシュモン ジャパン アライア(アライア) ピアス¥57,500/トムウッド 青山店(トムウッド)

グレー、身体のフォルムは精神のフォルムなのかもしれない

重ねてきた年月、たどってきた時間、グレーは、人それぞれの「ニュアンス」を透過する色なのかもしれない。ニットドレスのボディコンシャスなラインは、グレーを通して、その人のありのままの肉体と精神を、誰に媚びることなく表現する。