私を私たらしめるもの。【AMI MASAMITSU】のビスポークリング #141

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「いい歳して」という枕詞を添えるべきかどうかはわからないが、出会った瞬間に誰かを、もしくは何かを直感的に好きになることが、いまだによくある。正光亜実さんの作るジュエリーも、まさにそういう類いの一目惚れだった。

AMI MASAMITSUのビスポースリング。蠍のモチーフが、まるで地金に縫い付けられている

きっかけは、SNSで偶然目にした蠍のリングだった。イエローゴールドのワイヤー状の装飾が、まるで地金に縫い付けられているかのように見える。人の手の温もりが存分に伝わってきて、きっと素敵な人が作っているに違いないと思った。

問い合わせてみたら、正光さん本人から気さくなメールが返ってきた。アトリエは京都市内にあり、「よかったら見に来てください」と書かれてあった。天賦か職業柄か、フットワークの軽さには自信がある。返事をもらった翌日に、すぐさま訪れた。

刺しゅうのような装飾が手仕事の温もりを伝える、「EMBROIDERY」リング

AMI MASAMITSUのビスポースリング。ハートのモチーフに射抜かれて

“刺しゅう”のような装飾だから、コレクション名は「EMBROIDERY(エンブロイダリー)」。極細の柔らかな金線を使って、さまざまなモチーフや文字を形成し、それらを土台となるリングにレーザーで接合することで、縫い目のような風合いができる。揺らぎのある表情は、手仕事ならではの個性であり、魅力でもある。

着想を得たのは、17世紀のイギリス、スチュアート朝時代のクリスタルリングに見られる金線装飾。何百年も前から受け継がれてきた古典技法を取り入れながら、現代の溶接技術を駆使して生み出されている。ロンドンの名門、セントラル・セント・マーチンズでジュエリーデザインを専攻し、現地でさまざまなアンティークジュエリーに触れてきた正光さんだからこそ、たどり着いた表現方法だ。

大切なものを“縫い付ける”、ビスポークジュエリー

京都で製作されたAMI MASAMITSUのビスポースリング。

EMBROIDERY Bespoke Ring〈K18YG、K18WG〉¥390,000~/AMI MASAMITSU*価格はデザインやリング幅、素材によって変動

金線細工の成形から溶接、仕上げに至るまで、すべての工程を正光さんが京都のアトリエで、ひとりで手がけている。伝統と革新が融合したリングを見つめながら、なるほど、これは京都という地で作られて然るべきものだと腑に落ちた。

リングの幅は、5ミリ、7.5ミリ、11ミリの3種類。既存のデザイン以外に、フルオーダーメイドにも対応しているというから驚いた。ゴールドの地金をキャンバスに、好きな図柄やイニシャル、大切にしている言葉などを、自由に“縫い付ける”ことができる。まさに、世界にひとつだけのエンブロイダリーリングだ。

正光さんの飾らない人柄も相まって、彼女にデザインを託したいという思いが湧き上がってきた。ジュエリーは、持ち主の命よりも長く生き続ける。しかもそれが唯一無二のビスポークなら、私という人間が生きた証にもなり得る。この先自分を見失いそうになっても、「大丈夫、私は私だ」と思えるようなおまじないを刻みたい。もしかしたら数百年先も、誰かのもとで輝いているかもしれないと夢見て。

AMI MASAMITSU
https://amimasamitsu.com/ja

 

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。