2026.08.25

人生最後のキュビズム展かも!? ソウルのCAFE MAAで、ポンピドゥーセンター・ハンファの展示を噛み締める

今年6月にオープンした、ソウル・汝矣島の「ポンピドゥーセンター・ハンファ」。開館以来ずっと気になっていたのですが、先日ようやく訪れることができました。しかも記念すべき最初の企画展のテーマは「キュビズム」。これは見逃せません。

今年6月にオープンした、ソウル・汝矣島の「ポンピドゥーセンター・ハンファ」。開館以来ずっと気になっていたのですが、先日ようやく訪れることができました。しかも記念すべき最初の企画展のテーマは「キュビズム」。これは見逃せません。

INDEX

「過去50年でアジア最大級」という、仏館長のひと言の重み

ポンピドゥーセンター・ハンファのロビーフロア

ポンピドゥーセンター・ハンファのロビーフロア

フランスを代表する三大美術館のひとつ、ポンピドゥーセンターは大規模改修のため、2030年まで休館予定です。その膨大なコレクションを眠らせることなく活用し、新しい文化交流の拠点を築くため、さらに仏韓国交140周年を記念して誕生したのが、このポンピドゥーセンター・ハンファ。私が今回「絶対に見たい」と思ったきっかけは、とある記事で目にしたポンピドゥーセンター館長ローラン・ル・ボン氏の言葉でした。「ソウルでの展示は、過去50年でアジア最大級のキュビズム展」。前職でパリ国立ピカソ美術館の館長を務めたル・ボン氏がそこまで言うのなら、期待せずにはいられません。

会場に一歩入った瞬間、空気が変わった

パブロ・ピカソの「Bust of a Woman」。代表作『アヴィニョンの乙女たち』の制作時期と重なる、キュビスム前夜の重要な習作の1枚。

Pablo Picasso「Bust of a Woman」1907年 ピカソの代表作『アヴィニョンの娘たち』の制作時期と重なる、キュビズム前夜の重要な習作の1枚。

そして、その期待は裏切られませんでした。会場に足を踏み入れた瞬間から、どこか漂う空気が違います。パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックをはじめ、キュビズムを代表する作家たちによる約90点の作品が並びます。実際にはこんなにも力強く、存在感を放っていたのかと圧倒されました。ご存じの方も多いと思いますが、ピカソはキュビズムを生み出した中心人物です。そのピカソを知り尽くした専門家が「過去50年でアジア最大級」と語る展示だけあって、見応えは十分以上でした。

圧巻だった、ピカソの巨大な舞台カーテン

ピカソが手がけたバレエ作品「メルクリウス」の巨大な舞台カーテン

Pablo Picasso「Mercure」1924年 

なかでも圧巻だったのが、ピカソが手がけたバレエ作品「メルクリウス」の巨大な舞台カーテン。ローマ神話の伝令神メルクリウスを主人公にした短いバレエ作品で、当時のパリで流行していたギャグやパロディが散りばめられた、どこか不思議でユーモラスな物語だそうです。音楽を担当したのは、「ジムノペディ」で知られるエリック・サティ。彼はこの作品で、それまでの優雅なバレエ音楽とはまったく異なる世界をつくり出したといいます。軽快で、まるで街角のミュージックホールから聞こえてくるような音楽とか。そのサティの音楽に合わせて、ピカソが描いた巨大なカーテンが開き、ダンサーたちが踊る。約100年前の観客たちは、どれほど驚き、どれほど熱狂したのだろう。そんなことを想像しながら、しばらくその場を離れられませんでした。

翌朝、CAFE MAAで展示の余韻を味わう サンドイッチも、少しキュビズム的?

CAFE MAAのトマト・キュウカンバー・チーズサンドイッチとアイスアメリカーノ

ただ切って並べただけに見えますが、とびきりおいしいのは、一つ一つの素材のおいしさがいきているから。自家製の塩フォカッチャ、スライスした新鮮なトマトときゅうり、バター、チーズ、そして岩塩が添えられていて、自分でサンドイッチのように仕立てたり、パンをちぎってディップしたりして食べるシグネチャーメニュー「MAA bread」。

翌朝は、延禧洞の人気カフェ「CAFE MAA」へ。店内には穏やかな朝の空気が流れています。最近人気のキュウカンバーサンドイッチではなく、じゃない方のトマト・キュウカンバー・チーズサンドイッチをオーダー。スマホに残した展示写真を見返しながら朝食を楽しみました。隣の席では多分ご近所女性が一人静かに読書中。一方の私は、前日に見たピカソやブラックの作品を思い出しながら、ぼんやりサンドイッチを頬張っていました。

そういえばキュビズムとは、ひとつの対象を分解し、さまざまな角度から捉え直そうとした芸術運動です。目の前のサンドイッチを見ていると、トマト、キュウリ、チーズ、パン。それぞれ普通の食材なのに、重なり合うことで別の魅力を生み出しています。これって少しだけキュビズムっぽいのでは。そんなことを考えながら断面を眺めてみましたが、残念ながら自分なりの芸術考察が生まれることはありませんでした。ただ、サンドイッチはとてもおいしい。芸術的発見はなくても、朝食としては大成功です。

わかるより、考えるほうが幸せな時間

CAFE MAAの夏季限定かき氷

夏季限定メニューの「ピンス」。シロップは優しい甘さのチャメ(マクワウリ)と生姜を合わせた上品な味わいで、ドットのようにのせられているパッションフルーツのコンフィズリーが味のアクセントに。中からはタイの生姜に似たスパイス「ガランガル」の風味が効いた、濃厚でミルキーな自家製ソフトクリームが現れるというサプライズが。韓国オリジナルピンスとも一味違う、MAAオリジナルの一品!

タイトルには「人生最後のキュビズム展かも!?」と書きましたが、本当にそうなるかはわかりません。ただ、これほどの作品群を一度に見られる機会は、そう何度もないはずです。もう一度見に来るべきか。それとも、この日の余韻を大切に取っておくべきか。そんなことを考えながら、CAFE MAAを後にしました。

ピカソやブラックの作品は、「わかった」で終わるというより、「もっと見たい」と思わせる存在なのかもしれません。トマトとキュウリとチーズの組み合わせのサンドイッチなら、一口でおいしさを感じられます。でも、キュビズムはそうはいかない。だからこそ、もっと知りたくなるのでしょう。

ソウルを訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。そして、キュビズムの世界を実物で存分に味わってみてください。




風の通りが心地よいテラス席

気持ちの良い風が吹き抜けるテラス席も心地よい。

ポンピドゥーセンター・ハンファ ミュージアムショツプを覗き見!

ポンピドゥーセンター・ハンファ
ポンピドゥーセンター・ハンファの画像_15

住所:50 63-ro, Yeongdeungpo-gu, Seoul
時間:10:00~18:00(最終受付17:30)、水・土曜10:00~21:00(最終受付20:30)
休:月曜、1月1日、旧正月・秋夕(チュソク)の当日
The Cubists: Inventing Modern Vision(キュビスト:視覚の革新者たち)
期間:〜2026年10月4日(日)

CAFE MAA
CAFE MAAの画像_16

住所:33-6, Yeonhuidong, Seoul, Korea
時間:09:00〜18:00 Monday-Sunday
休:不定休

エディターTARUIプロフィール画像
エディターTARUI

気づいたらメガネやサングラスを集めてました。しかし、何年か寝かせてからかけるという癖あり。ひとりっぷ®修行中。セレブやK-POPを語りがち。