ゴダールの名作『勝手にしやがれ』の舞台裏を描く青春劇。映画『ヌーヴェルヴァーグ』のリチャード・リンクレイター監督にインタビュー

リチャード・リンクレイター

後世の映像作家に多大なる影響を与えた映画運動、ヌーヴェルヴァーグの記念碑的傑作。しかし、無名の新人監督だったジャン=リュック・ゴダールも、キャストやスタッフも、自分たちが作っている『勝手にしやがれ』(’60)がそんな意味を持つことになるとは、夢にも思っていなかった。

リチャード・リンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』は、その混乱に満ちた制作過程を、愛に満ちた視点で再現する。「私自身が『勝手にしやがれ』を初めて観たのは、20歳か21歳の頃。正直、理解はできませんでしたが、なぜか魅了されました。そして、見直すたびに革新的な要素に気づき、どんどん夢中になっていったのです。ゴダールの作品の中でも、これは特別。制作当時は『うまくいくはずがない』と言われていました。ジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグの力も大きいけれど、ゴダールは現場の空気をうまく用いながら、これまでにないものを生み出したのです」

『ヌーヴェルヴァーグ』

“うまくいくはずがない”というのは、当時の関係者全員が感じていたこと。ゴダールは台本の1ページ分しか撮り終えていないのにその日の撮影を突如終了したり、思いつきで脚本を変えたりしては、自分以外の人々を不安に陥れた。セバーグは降板することを考え、ベルモンドもこれでキャリアは終わりだと嘆いたという。

「そんなハチャメチャで一触即発の、当時の現場の空気を表現したかった。そこにはユーモアと喜びもある。自分がデビュー作を撮ったときのことも思い出しました。30 年の経験を積んだ今、昔のような自信のなさに悩まされず、フレッシュな気持ちだけを改めて感じられたのは、素敵なことでした」

『ヌーヴェルヴァーグ』

テキサス出身のリンクレイターは、フランス語を一切話せない。だが、全編をフランス語で撮るという決断に揺らぎはなかった。

「この映画を作り終えた今も、私のフランス語はまるで上達していません(笑)。現場の人たちはみんな流暢な英語を話すし、問題はありませんでした。追求したかったのは、私が観たヌーヴェルヴァーグの映画を再現すること。モノクロで、英語の字幕がついていて、当然デジタルではなくフィルムで、画像が粗い。そんな映画にすると、最初から決めていたのです」

『ヌーヴェルヴァーグ』

ベルモンド役に大抜擢されたオーブリー・デュランは、この企画を聞くまで『勝手にしやがれ』を観たことがなかったという。ゴダールを演じるギヨーム・マルベックはもともと映画監督でもあり、プロの俳優として映画に出演するのは初めて。監督として彼らに伝えたのは、「役柄を、偉大なる人物だと意識しないで」ということ。

「そこはむしろ忘れてほしかったです。演じる立場として、崇めてほしくありませんでした。ここで描くのは、1959年という時点のその人たちなのですから。革命が起きていた瞬間ではありますが、当時は彼らの誰も、それを意識してはいませんでした。ただ流れに身を任せていただけです」

あの頃の空気を、日本にいながら今感じてみてほしい。

『ヌーヴェルヴァーグ』

1959年のフランス。映画批評誌に執筆していた28歳のゴダールは、長編映画を監督すると決める。しかし映画作りのルールを無視した彼のやり方に周囲は振り回されるばかりだった。(全国公開中)

Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)プロフィール画像
DIRECTORRichard Linklater(リチャード・リンクレイター)

1960年生まれ。『恋人までの距離』(’95)で注目を浴びる。『ビフォア・サンセット』(’04)でアカデミー賞脚本部門、『6才のボクが、大人になるまで。』(’14)で監督、脚本部門候補に。前作は『ブルームーン』(’25)。

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