Massimo Giorgetti / MSGM

Interview with Massimo Giorgetti

PROFILE
マッシモ・ジョルジェッティ●MSGMクリエイティブ・ディレクター。1977年イタリア・リミニ生まれ。2009年MSGMを設立。自身のプレイリストをスポティファイチャンネルで発信するほどの音楽好き。現代アートへの造詣も深い。シグネチャーアイテムのTシャツとスウェットをクールに進化させる計画が進行中。
photography: Giovanni Corabi

ショーは絶滅するべきものでも
時代遅れなものでもない

 ロックダウン中の生活についての質問に、「ロックダウンはもう終わったから」と、未来について話すことを選んだマッシモ・ジョルジェッティ。「Never Look Back, It’s All Ahead(過去を振り返るな。すべてはこれから先にある)」というメッセージを、MSGMデビューコレクションのTシャツに記した彼のポジティブなスピリットは健在だ。まず、一番気になることを聞いてみた。パンデミックを経て、今後のファッションはどう変化するのか。

「これまでのファッション業界は、利益に気を取られすぎていた。現実とかけ離れたスケジュールやシーズン設定による激烈なリズムを課せられて、真に鼓動する心を見失ってしまった。今、創造性の根源を再発見し、感動とインスピレーションを喚起するものに回帰すべき。それから、ファッションの役割も変わる。ファッションの大きな利点は、“軽薄な虚栄心”と思わせながらも、実は、“人類学的闘い”を挑めることなんだ。つまり表面的なものではなく、もっと奥深いもの。多くの人や家族が関わり、経済を動かす産業であり、時には非常に深刻な社会的要因への認識を高めることだってできるんだ」

 ということはファッションも、社会問題に貢献できるということだろうか? 「もちろん。当然、ファッションが許す範囲内で。こういった問題に義務として立ち向かっている人々に、取って代わることはないけれど、責任の一端を負うべきであり、目の前にある問題に目をつむらないでいたい」

 環境負荷の高い業界でもあるが、環境問題にはどう取り組んでいこうと考えているのだろう。

「新技術や研究への投資など政府レベルでの取り組みで、環境に悪影響を及ぼすもの、毒性のあるものすべてに関して代替案を探し、これ以上環境バランスを崩すことは避けていかなくては。またわれわれは過剰生産をやめなくてはならないと思う。そして今や周知の事実となっている、不利な立場の国を搾取し、悪用している状況に加担するのをやめるときなんだ。サステイナビリティは、最も大切なテーマ。小さなことだけれど、会社全体で使い捨てプラスチックの使用をやめて、各自のデスクに分別ゴミを入れるための容器を配置しているんだ。MSGMでは、現在重要なサステイナビリティのプロジェクトが進行中。今はまだ秘密だけれど、楽しみにしていてね」

 5月、米英のファッション団体が、従来のやり方を改め、業界のスローダウンを呼びかける共同声明を出すなど、ファッション業界全体に流れるアンチテーゼも。今までのような大規模なファッションショーに疑問を投げかける声もある。

「MSGMも今後の方向性を検討しているところ。ショーは絶滅するべきものでもなければ、時代遅れなものでもないことは確か。でも、そのフォーマットはもっと豊かに、進化した形に変化していかなければならないと思う。すべてのプレスとバイヤーが毎シーズン、すべてのファッションウィークのショーに行くことは、サステイナブルではないし、もはや必須ではないといわれているよね。もっと限定した観客向けのショーや、ファッションウィーク以外の時期のイベントなど、多くの人が世界中を大移動しない新たな形式へとシフトすることを考える機会だと思う。もちろんそれは瞬時に変われるものではなく、時間もかかるけれど、それぞれのブランドが試行錯誤して、アイデンティティとビジネスに一番合った最上の方法を見いだせるはず」

 困難なテーマも、彼がパワフルに語ると、楽しそうなことが起こる予感に満ちてくる。

 今後デザイナーを目指す人へメッセージ。「想像力を捨てず、自分を信じ、目標を掲げて夢の実現を願うこと。その夢は少しの幸運とたくさんの努力でかなえられるから。今置かれているような最大の危機の中にこそ、可能性がある。古いプロジェクトは廃れ、新しいものが生まれるチャンスなのだから」

photography: ©Seth Armstrong

米国人アーティスト、セス・アームストロングが織りなす世界。「先鋭的で、素晴らしい。“自然”の世界と、人間がつくり出した“人工”、家の中と外界を見事に表現。ロックダウン中の数カ月間、彼の作品は日々を語る物語のように感じられた」“Laurel Canyon” by Seth Armstrong

interview & text: Megumi Takahashi

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