2020.07.29

Thebe Magugu

Interview with Thebe Magugu

PROFILE
テベ・マググ●南アフリカにあるファッションスクールLISOFで学ぶ。2017年にブランド設立。ローカルな物づくりに焦点を当て、アプリを使い生産の透明性の証明をするなど、サステイナブルなアプローチが認められてLVMHプライズ2019のグランプリを獲得した。

ローカルな服作りをすることで、
サステイナブルを実現できる

 2019年にアフリカ人として初めてLVMHプライズのグランプリを受賞したテベ・マググ。母国南アフリカに根ざした、サステイナブルな服作りが評価された。そんな南アフリカも新型コロナの脅威にさらされた国のひとつだ。ヨーロッパでの感染拡大後すぐに国を閉鎖、政府は制御に邁進した。

「感染者は12000人でほかの国と比べても悪くはない数字。それでも南アフリカが厳格な対応をしないといけないのは、医療が十分ではない地域に広がると大惨事になってしまうから」

 初のプレゼンテーションを行なったパリコレから戻ると、すぐに南アフリカではロックダウンが始まった。テベは自粛生活をどのように過ごしたのか?

「次々に面白いアイデアが湧いてきたので、ずっと自分の頭の中にいたよ。まあ、それくらいしかできない状況だからね。屋外にいることで得られるエネルギーや、人との関わり合いが恋しい。ひとりでいることで思考がワイルドになったり、言いたいことはたまる一方なんだけどね」

 困難の時だからこそ、フレキシブルでありたいと考え、ビジネスを継続するための新たな方法や、われわれが直面している問題に対するクリエイティブな解決方法も模索。それは、これからの姿勢を見いだすためのよい機会となった。

「この事態でファッション業界は自身を見つめざるを得なくなった。今まで多くの人がすごいスピードの中にいたことや、まったくサステイナブルではないルーティンにいたことを認識したはず。これからのファッションは従事する人たちや労働者、環境に対してやさしく、古き慣例は改善されるべき」

 やはりテベのビジネスもオーダーのキャンセルや、支払いの遅れ、プロジェクトの延期など、ほかの若手同様に新型コロナの影響を受けた。しかしながら、この状況を経験しているのは自分だけではないので孤独ではない、今はお互いに助け合うべきときなのだ、と笑顔を見せる。

「実はもうすぐオンラインストアをローンチ予定なんだ。家から出なくても僕のコレクションを誰でも買えるようになる。特に実店舗がクローズになっているこの状況だから、今がいい機会だと思って。まだ新しいブランドだから、取り扱い店も少なく、一部の地域でしか僕の服に触れてもらえないことに、今までフラストレーションを感じていたけれど、これからは世界中の人たちがアクセスできる」

 ビジネスモデルを変えるしか選択肢はない若手デザイナーたち。しかしオンラインストアのように、以前から足踏みしていた施策を実行する後押しにも。一方で、国外での素材調達や生産は、今回多大な影響を受けることになった。ゆえにテベは自分のブランドがローカルに根ざすことに感謝している。

「新型コロナ以前のような活動やシステムではファッション産業に未来はない。それは地球を汚す、人類全体の虐殺のようなもの。注意したいのは、サステイナブルを心がけるわれわれが頼る原材料やその生産者はすごく少ないということ。考えなしに搾取することは限られた資源を根絶やしにしてしまう。循環させるプロセスの管理には、生産者を保護するサステイナブルな仕組みをつくらなければならない」と、サステイナビリティの潮流にすがろうとする、新型コロナ後のファッション業界に警鐘を鳴らす。

「加えて、アフリカでは環境的な問題だけでなく、社会的なサステイナビリティも重要だと考えている。南アフリカでは新型コロナの感染拡大前で30%の失業率。人々の手助けも必要なんです」

 世の中はデジタルへと急速に移行しているが、ファッションでは“Phygital”(デジタルとフィジカルの造語)が表すように、ふたつの要素を掛け合わせたアプローチが主流になっていきそうだ。テベもまた新作コレクションの発表にこのテーマを採り入れる予定だという。今から9月が楽しみだ。

南アフリカを拠点にする写真家クリスティン・リー・ムールマンと、スタイリストのイブラヒム・カマラが手がけたキャンペーン写真。テベの生まれ育ったキンバリーがテーマ 。

「パターン作りをずっとしていると、自分を見失いそうになることも。そんなときにこんな落書きがちょっとしたエンターテインメントになる。パターンをデジタル化するインターンを怒らせてなきゃいいんだけど(笑)」

interview & text: Yu Masui

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