さまざまな出会いをもたらした作品
——まずは三都市にわたって続いた撮影で、印象に残ったことを教えてください。
磯村「最初に日本のクルーと撮影をして、次に韓国に移動したのですが、日本の撮影までのスタッフもいらっしゃって。すでにそこで寂しい別れがあったんです。そして、韓国に行くと韓国のクルーがいる。僕は海外のスタッフと仕事をする経験がなかったので、非常に刺激的でした。韓国のスタイルと日本のスタイルは近いといいますか、映画やドラマの映像に対するクリエイティブな泥臭さは、似ているものがあると感じました。ドイツに行くと、労働環境に対してすごく厳しい。時間に関しても、『1秒でも延びたらお金がかかるよ』というようなプレッシャーを感じて」
テギョン「(笑)」
磯村「ですが、土日は家族の時間を大事にするなど、しっかり分けているところが全然違うなと。そういった他の国のいいところを日本に取り入れることができたら、またいいスタイルが生まれてくるのではないか、と思うほど刺激を受けました」
テギョン「少しずつ現場の空気が違うんですよ。それとやっぱり、今回は各国のクルーの方々との出会いがあって、別れがあって。それ自体が、10年間のストーリーを表現するのにいい環境だったと思います。クランクアップの日には長い旅路を終える気持ちで、いままでのことを回想しながら、『こんな気持ちになるんだな』と実感しました。いまでも忘れられないんですが、最終日は朝日を狙っていたので、集合時間が午前2時で、現場に行くと真っ暗な森に車だけがある。そこでスタッフ全員で朝日が昇るのを待っていたんです。その時の光景をいまも鮮明に覚えています。磯村さんだけじゃなく、スタッフの方々も、こんなにいい人たちと集まってやれることってもうないかもしれない、と思うぐらいでしたし、“ソウルメイト”がただのタイトルじゃないように感じられ、みなさんと出会えた感謝でいっぱいの作品になりました」
アスリートであることが二人の運命を決める
——面白いのは、物語の最初で琉とヨハンがアスリートという設定になっているところ。琉はアイスホッケー選手で、ヨハンはボクサーです。そういう人物が映画やドラマに登場すると、失敗しても再起をかけたり、勝負にこだわったりする話が多いのに、『ソウルメイト』は違う展開を見せます。まずは、役作りにおいて体づくりや訓練は重要でしたか。
磯村「僕はアイスホッケーだったのですが、子どもの頃に行ったスケート以来滑っていなくて。そこで、まずは滑るところから始まり、ですがやっぱり難しくて。アイスホッケーのシューズはフィギュアスケートのシューズより難しいんです。なので、立てないところから始まり、練習の2回目くらいで一回挫折しました。ですがなんとしても成功させなきゃいけないので、クランクインの半年ほど前から練習が始まり、自宅でもトレーニングをして。ようやく滑れるようになり、パックを打てるようになるところまで、本当に頑張りました。そのおかげもあり、アイスホッケーが好きになりました。いまでも試合を観に行ったり、応援もしているほど、いい出会いだったと思います」
テギョン「僕は初めてボクシングに触れたんですが、練習を始めてから実際にボクシングのシーンを撮るまでに4か月くらいトレーニングを重ねました。一般的に、ボクサーというと常に“過酷さ”とか“減量”というキーワードがあるんですが、ヨハンという人間にも厳しいことがたくさん起きます。それにボクサーのつらさがリンクしていたので、演じるうえにはよかったです。ボクサーには精神的にも大きな負荷を抱えることがたくさんあるので」
——そして、二人の心が初めて通じ合うのがボクシングの試合です。それぞれのキャラクターにおけるスポーツの意味はどんなところにあると思いますか。
磯村「アイスホッケーは氷上の格闘技と言われているので、闘うという意味でボクシングと通じている部分があるからこそ、ヨハンのボクシング姿を見て、琉には感じるところがあったのだと思います」
テギョン「ボクシングはリングの上で一対一で闘うスポーツですよね。相手を倒すことに一人で立ち向かわなきゃいけない。孤高のスポーツだと思います。自分の代わりに闘ってくれる人もいないし、リングに一度上がると逃げ場もない。その状況が、ヨハンが置かれた状況に似ている。ヨハンは生活面では妹を一人で守らなきゃいけないし、プレッシャーが大きかったと思うんです。そういう状況が似ているので、橋爪(駿輝)監督もボクシングというスポーツを選んだんじゃないかと」
磯村「もし琉がアイスホッケーをやっていなくて、たとえばまた別の事件のせいでドイツを訪れ、たまたまヨハンの試合を観たとしても、あのように応援しなかった可能性もある。『頑張れよ』と言いたくなってしまうのは、やはりスポーツをやっていたからこそわかる、選手の本気度といいますか。その熱さがわかったからこそ、ヨハンを応援することができたのではないでしょうか」
テギョン「ヨハンと琉の出会いは、人生のつらさを受け入れようとしている人と、そこから逃げようとしている人という対照的な二人が、ある重要な瞬間に巡り合ったように感じます。ヨハンにとってボクシングは逃げたくても逃げられない、やめたくてもやめられないものだったのが、琉と出会うことで自由になれたんだと思いますね」
ソウルメイトの存在を感じること
——いまプライベートで大変なことを忘れたり、仕事の息抜きにしていることって何かありますか。
磯村「最近、近所で工事していて。建てていく過程を毎日見るのが好きです。お祓いなどをしているのを見たり、更地から少しずつ土を掘ったりするのを見て、どんな家が建つのかを想像し、工程を追うのが面白くて。僕は建築も好きなので、いまハマっています」
テギョン「僕は家で料理をするのが大好きなんです。YouTubeで料理のレシピを見たりするのが好きなんですが、仕事柄、どうしてもダイエットをしなきゃいけない時期がある。そういう時でも食べてもいいデザートのレシピを試しています。砂糖を使わないもの、小麦粉を使わないもの、代わりにギリシャヨーグルトを使うものとか」
——では最後に。お二人それぞれにとっての「ソウルメイト」とはどんな存在ですか。
磯村「自分にとってソウルメイトは、テギョンさんですね」
テギョン「いやー(笑)」
磯村「やはりこの作品でソウルメイトというものを知り、ずっと一緒に歩んできた仲なので。いまこうやって再会できるのも嬉しいですし、韓国に行ってもどこか繋がってる感じがあるんです。テギョンさんがどう思っているのかはわからないですが、僕にとってのソウルメイトは、テギョンさんのような人です」
テギョン「僕にとってもソウルメイトは磯村さんです。今日は久々に会ったんですけど、ブランクも感じず、相変わらず嬉しいし、一緒にいて楽しいし、幸せです。ソウルメイトは、距離が離れていても一緒にいるように思える存在。すごく大切な存在ですね」
Netflixシリーズ『ソウルメイト』
2026年5月14日(木)世界独占配信
橋爪駿輝が脚本・監督を務めた。孤独を抱える二人の男性が、苦しみながらもともに生きようとする。だが運命は周りの人々も巻き込んでもつれていく。https://www.netflix.com/SoulMate
磯村勇斗 俳優
1992年9月11日生まれ。2014年デビュー。映画『ヤクザと家族 The Family』『劇場版 「きのう何食べた?」』(2021)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『不適切にもほどがある!』(TBS系)をはじめとした、話題のドラマにも数多く出演。
オク・テギョン 俳優・アーティスト
1988年12月27日生まれ。2008年にKPOPグループの2PMのメンバーとしてデビュー。俳優としても『ヴィンチェンツォ』(2021)など多数のドラマ、映画で活躍。日本映画の『グランメゾン・パリ』(2024)にも出演。
SPUR2026年7月号(5月22日発売)にも磯村勇斗さんとオク・テギョンさんが登場します。ぜひチェックしてください!