紫 今が生み出す、中毒性ある楽曲の秘密とは?

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誰にでもわかる言葉で、誰も聴いたことがない表現を

紫 今
紫 今

“今”を切り取りながらジャンルを自由に行き来する

両親の影響で幼少期からゴスペルやアフリカ音楽に親しみ、歌謡曲、グランジ、K-POPなど幅広い音楽を吸収。ジャンルを縦横無尽に行き来する楽曲は、「リスナーとしての感覚を研ぎ澄ませて、聴いたときの心地よさを一番大事に」生み出されている。耳なじみがよく中毒性の高いメロディラインを得意とするが、意外にも楽曲制作は必ず歌詞から始まるそうだ。独特のワードセンスが生きる作詞の美学は「誰にでもわかる言葉で、誰も聴いたことがない表現をすること」。「魔性の女A」「凡人様」などバイラルヒットした楽曲のMVのコメント欄は、ファンによる歌詞の考察で賑わっている。

子どもの頃から好きな色という紫は、赤と青という正反対の色が混ざり合った色。まるで彼女のジャンルレスな音楽性を表したようだ。「今」という名前には、「何十年たっても、常に今っぽいと言われる音楽を作り続けたい」という思いを込めた。型にとらわれず今と向き合い、柔軟に自分を変化させる。2025年からはそれまで隠していた自身の顔を出して活動を開始。ライブを重ねる中で「観客と目が合った状態で歌いたい」という思いが強まったことが、その背景にある。「サングラスをつけて歌っていたのですが、次第に客席との隔たりを感じるようになって。熱量の高いライブを通して、私という人間の発する言葉や生き方に影響を受ける人が存在することを強く認識し始めました。たとえば私は背が低いことがコンプレックスだったけど、それをネガティブに捉えていたら、同じ身体的特徴を持つ人を悲しませてしまう。まっすぐに客席を見て歌えないような生き方はしないようにしよう。そう心に決めています」

ハイトーンのホイッスルボイスから迫力の低音まで、5オクターブの声域を操る歌声は“カメレオンボイス”と称される。新曲「New Walk」は、自らの才能と向き合うクリエイターを描くTVアニメ「左ききのエレン」のエンディングテーマ。同じ創作に向き合う人間として、紫 今はこの作品に深く共感した。「この世に天才も凡人もいないけれど、“才能”は存在すると思っています。その構成要素は持ち前のセンスと、誰かにとって苦しいことを努力だと思わずにできる力。たとえば私はフェイクの練習を無限にできるけど、それが苦でしかない人もいる。自分にはその種の“才能”があったから、ここまで来られたと思っています」

「話が合う人が家族しかおらず、ずっと寂しかった」と語る彼女にとって音楽とは、思いを伝える手段ではなく、気づきを与え合う対話の場だ。「子どもの頃から小難しい話が好きで、周囲になじめなくて。でも歌詞を通せば、いろんな人と対話ができる。自分の中に生まれた疑問や葛藤を音楽にして、いろんな人に投げかけているんです。それに対して『こういうこと?』とコメントをもらい、私が救われることもある。だから楽曲のテーマや方向性はいつもバラバラですね」

夢は「死ぬまでに実現したい」と熱望するドームツアー。常に“今”と向き合いながら、紫 今は歩んでいく。

紫 今プロフィール画像
シンガーソングライター紫 今

むらさき いま●2002年生まれ。楽曲制作からMVのプロデュースまで手がけるマルチクリエイター。2024年発表の「魔性の女A」が総再生5億回突破。4月8日に「New Walk」を配信リリース。

「New Walk」

『BOXBOXBOXBOX』  坂本 湾

TVアニメ「左ききのエレン」エンディングテーマ。才能の限界に苦しみながらも“何か”になることを夢見る主人公と、対比する孤高の天才を描いた本作に、紫 今の解釈が加わった軽快なポップソング。

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