長沢節先生、“美”ってなんですか?

日本のファッション・イラストレーターの草分け的存在であり、デザイナーであり、エッセイストであり、映画評論家。セツ・モードセミナーの創設者としても知られる長沢節さんの回顧展が、ただいま弥生美術館にて開催中です。タイトルは「生誕100年 長沢節展―デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長―」。

 
文化学院美術科を卒業後、上記のように多岐にわたる活躍。その後美術学校、セツ・モードセミナーを設立し、数多くの有名デザイナーを輩出しました。そんな偉大な功績を裏打ちするのは、唯一無二の確固たる美学。たとえば〈ハイヒールのパンプスは決して背丈を高くするために履くものではなく、脚の甲の魅力を強調することだと思っていただきたい〉。〈美しい人というのは、その魅力がほとんど全部後ろについているからだと思う〉。そんな独自の美意識が宿る文言の数々に、はっとさせられます。
展示されている数々のデッサン画も、本当に綺麗です。柔らかく流麗な線には、力強さもある。そのラインから浮かび上がるうなじやくるぶしの曲線が実にエレガントです。
会場の隅にあるテレビに映し出されていたのは、お気に入りの男性モデル・ポール(ある日突然セツ・モードセミナーを訪ねてきたアメリカ人だそう)のデッサンを描く長沢節さんの手もと。よどみない手つきで、ポールの身体が紙に落とし込まれていきます。その鉛筆の動きにも無駄がなくて、こうやって描いてゆくのですね……と凝視してしまいます。
もうひとつ、長沢節さんがプロデュースした、1967年の挑戦的なファッションショー「モノ・セックス・モード・ショウ」もなんとこの度再現されます。男女の性差という固定概念から解き放たれた衝撃的なショーは、もうこの機会を逃せば二度と見られないかもしれません。こちらは要事前予約で、520日(土)、610日(土)はまだ申込可能です。

と、展示のコンテンツはもちろん素晴らしいのですが、さらにニュースがあります。SPURの誌面やウェブでおなじみのイラストレーター、エッセイストの石川三千花さんの新刊が発売されます! 石川三千花さんもセツ・モードセミナーのご出身。長沢節さんが雑誌『SO-EN』にて28年間、332回にわたって執筆した連載から抽出した映画評を、三千花さんらしい鋭く愛のあるツッコミとともにまとめたとっておきの映画本、その名も『セツ先生とミチカの 勝手にごひいきスター!』。会期中の416日(日)と63日(土)、両日とも15時から石川三千花さんのトークショー&サイン会も催されます。絶対に楽しい時間になること間違いありません。師弟コンビによる一冊は必見です。

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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